マイナス金利は「劇薬」というより「毒薬」だ

日銀は市場との対話機能を失ってしまった

マイナス金利の好影響が唯一見られるのが、円安の進行と株価の上昇においてです。黒田総裁はマイナス金利の副作用は十分に認識したうえで、つい先日まではマイナス金利について「現在も考えていないし、将来も考えていない」と強く否定していたので、今回の市場のサプライズは非常に大きかったといえるでしょう。

とりわけ今年に入って円を買い進んでいた投機筋は、今回のサプライズによって大きな恐怖心を植え付けられたのではないでしょうか。マイナス金利をまったく予想できなかったのに加えて、1日であれだけの円相場の反応を見せつけられてしまっては、円高を見込む投機筋は今後、安易に下値を売り込みにくい状況に陥っているように思われます。

12月30日の記事では、「円高が進む局面では、ドルの買い場を1回は探ってもいい。追加緩和の内容にもよるが、5円~10円の幅で利益を得られる可能性は十分にある」と述べましたが、その買い場は早くも終了してしまったようです。これからは非常に読みにくい相場になっただけでなく、値幅を取るのも難しくなってきているので、しばらくはドル投資を控えたほうが無難であると思っております。

黒田総裁の発言に対して疑心暗鬼に

時期的に2月中旬から3月末までは、日本企業による円買い需要が高まるものと予想されますが、しばらくは115円台が岩盤のように下支えラインとして機能するものと考えております。黒田総裁は「必要な場合はさらに金利を引き下げる」と、金融市場の投機筋を強く牽制しているからです。私はこの牽制が中期的には成功するものと見ています。

ただし今回の一件によって、日銀が金融市場との対話機能を失いかねない状況に陥っていることには、留意する必要があります。日銀がマイナス金利を採用する1週間前には、黒田総裁はマイナス金利導入を考えていないと明言していたのです。確かに、やらないと言ってやったからこそサプライズになったわけですが、だからこそ、日銀にとってこれからの金融市場との対話が非常に難しくなっていくだろうと思われます。

というのも、黒田総裁が金融政策について何かを発言するたびに、金融市場は「総裁はウソを言っているのではないか」と疑心暗鬼になるからです。日銀と金融市場の対話が上手く機能しなくなるというのは、とりわけ出口戦略を考えなければならない段階に入った時に、相場の大きな攪乱要因になりえるのです。

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