『ソーシャル消費の時代』を書いた上條典夫氏(電通ソーシャル・プランニング局長)に聞く
--消費は個人的な営みの要素が大きいのでは。
確かに社会のことだけ意識して消費するというのは変だ。自由があってこそ楽しいのが人間。もちろんソーシャル消費は不自由で禁欲的なものではなく、むしろ複合的な満足感を喚起できるような消費の原理ととらえたい。
たとえば、環境に配慮しながら、古着でおしゃれをする。地産地消でおいしく食べ、地元の農業を支える。インターネットでフェアトレードの商品を購入する。地域活動に積極的に参加して、健康を維持する。そうすることで、社会への思いを消費によって伝えていくことができる。
--なぜ2015年が目安なのですか。
ちょうど5~6年後に現実味があると思った。10年後というといまのような大きな変化の時代では先のことに過ぎる。かといって来年のこととすれば、かえって状況を見極めにくい。それに比べて、5~6年後はいまの変化の帰結がある程度出るだろうと思えた。経済的にはアメリカも日本もパワーのポテンシャルはあるだろうし、そこにプラスで中国の消費が加わる。5年後には世界経済は立ち直っていると。
ただそこで同じ過ちをしてはいけない。消費者は消費者で、単純発想ではない消費を5年後にはしていないと。同じ轍を踏まないソーシャル消費でありたい。こう考えるとすごく身近だけど、リアリティがある変化となりそうだ。
--招致期待のオリンピックはじめ、国の施策と兼ね合う時期でもあります。
私は日本オリンピック委員会の専門委員、また招致委員でもある。その15年の翌16年に日本にオリンピックを招致できたらいいなと思っている。スポーツは日本を元気づける。WBCやゴルフのマスターズでも沸き立った。招致は元気が出るきっかけになる。環境にやさしいコンパクトな大会は、ソーシャル消費を典型的に示すこともできる。
もう一つ、15年というキーワードを出したかった理由に食料自給率の向上がある。農水省はいま、食料自給率を上げるための広報戦略推進事業、名づけてフード・アクション・ニッポン運動を展開している。その総合プロデューサーを仰せつかった。食料自給率を5%アップし15年に45%まで上げようと、これは政府の骨太方針にも入っている。
それに15年がたまたま重なる。コメを中心にした日本の安全安心な食材が消費者には合う。安ければいいと輸入に頼ろうとしても、日本は食料の安全保障からいっても具合が悪いのは明らか。国産の食材を買って消費すれば農家にその分おカネもいくから農業も再生する。自分の行動によって社会の向こう側にいる生産者も潤う。日本の農業がしっかりすることはどう考えてもいいこと。これもソーシャル消費といえる。