ワタミ・元気寿司に出資する「神明」の正体 コメ卸が外食業界再編の主役に踊り出た

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その後、2014年10月に神明はかっぱ寿司の全株を外食大手のコロワイドに売却、一方で2015年6月に元気寿司の株式を買い増し、子会社化した。

会見する神明の藤尾社長。回転ずし業界に続き、居酒屋業界でも再編を引き起こすのか(撮影:尾形文繁)

神明HDは、昨年11月に取引金融機関を通して、ワタミに提携の話を持ち掛けた。

ワタミの清水社長は提携を受け、「コメを含めた食材の安定調達や居酒屋以外の業態開発をしていきたい」と語る。

ただ、神明HDにとってどの程度のメリットがあるのか。

ワタミは「現在契約している農家や(別のコメ)卸との契約が2017年まで残っており、神明HDに切り替わるのは2018年から」(清水社長)とまだだいぶ先のこと。しかも、居酒屋で消費するコメの量は、回転ずしほど多くはない。

見えない、コメ卸と居酒屋の相乗効果

業態開発についても、外食事業でのノウハウがない神明HDにとって参画するメリットが見えてこない。

藤尾社長は「ビジネスマン、学生など今までターゲットにしていた客層にこだわると居酒屋は厳しい」、「家族客向けのメニューや業態開発をワタミと取り組んでいきたい」とするが、はたして、競争の厳しい外食業界で通用するのか。

ワタミの2016年3月期の業績は、介護事業の売却によって最終黒字を確保する見通しだ。本当の勝負は、収益柱だった介護事業がなくなった、来期(2017年3月期)にどういった収益改善策を打てるかが焦点となる。

居酒屋事業は2000年頃から15年近くにわたって、既存店売上高の前年割れが続いている。一度失ったブランドの信頼も、取り戻すのは容易ではない。

IR資料で確認するかぎり、ワタミの国内外食事業の既存店売上高は2000年から前年割れが続いている。(撮影:今井康一)

ワタミは当面、神明HDとの提携や事業売却で得たキャッシュの一部で、居酒屋「和民」など約100店の業態転換を進める計画だ。

同社は専門メニュー特化型や地域密着型業態の開発に着手している。

昨年9月に開業した天然マグロを提供する「ニッポンマグロ漁業団」は、業態転換後の売上高は前年比で5割増と好調だという。

かつて、回転ずし業界の再編を仕掛けて、失敗に終わった神明HD。藤尾社長は「手前みそだが、人を見る目には自信がある。ワタミは必ず業績回復するし、客も戻ってくる」と断言する。

ワタミの再建にどう手を貸していくのか。その先に居酒屋業界の再編も視野に入れているのか。藤尾社長の次の一手に注目が集まる。

常盤 有未 東洋経済 記者

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ときわ ゆうみ / Yuumi Tokiwa

これまでに自動車タイヤ・部品、トラック、輸入車、楽器、スポーツ・アウトドア、コンビニ、外食、通販、美容家電業界を担当。

現在は『週刊東洋経済』編集部で特集の企画・編集を担当するとともに教育業界などを取材。週刊東洋経済臨時増刊『本当に強い大学』編集長。趣味はサッカー、ラーメン研究。休日はダンスフィットネス、フットサルにいそしむ。

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