悲惨なバス事故を繰り返さないための教訓 道路交通における安全をどう確保するか
ここまでバスを運行する側の問題を書いてきたが、利用者も心掛けておきたいことがある。車に乗ったらちゃんとシートベルトを装着しておくことだ。今回の事故では、死亡した乗客13人中12人がシートベルト非装着だった。装着していたのに命を落とした人もいることを考えるとシートベルトは完璧とは言えないものの、万が一のときに命綱になる安全装備であることは間違いない。たらればを言い出したらキリがないが、もし、シートベルトを全員がちゃんと装着していたら、どうだったかと悔やまれる。
「自分だけは大丈夫」というのは慢心だ。報道でもシートベルトの件はあまり大きく扱われていない。今回、犠牲になったのは大学生ばかりで、まだ移動経験には長けていなかったのかもしれない。
シートベルト装着の義務づけはバスも同様
乗用車の後席でもシートベルト装着が義務付けられているのは、事故のときに車内で全身を強打したり、車外に放り出されたり、同乗者にぶつかったりするからだ。これはバスに当てはめても同じことだ。今回の事故を教訓にして、自己防衛していくことが必要で、子どもを持つ親は口を酸っぱくしてもシートベルトの装着を習慣付けさせるなどしないと、惨事は永遠になくならないだろう。
安全なバスを選ぶことも、もちろん利用者の責任である。しかし現状では、どのツアーが安全か見極めることは難しい。規制緩和の見直し、旅行会社とバス会社の関係改善など、抜本的な見直しが望まれるが、内部事情を伺うと、我々が望む通りに事は進まないかもしれない。
「旅行業界は大物政治家との太いパイプが存在しているとの噂があります。今回の報道でも、運転手やバス会社の過失責任を追求する内容が多く、規定割れの受注を求めた旅行会社の話があまり出てこないのは不思議です」(運行管理者)
とはいえ、国立競技場やオリンピックのエンブレムのように、多くの国民が改善の意志でまとまれば、状況を変えることはできるはずだ。
スマートフォンを活用した配車アプリで有名になった米国ウーバー(Uber)には、運転者を評価するシステムがあり、利用者はこの評価を参考にして利用する。こうしたシステムなら民間企業が独自に立ち上げることが可能であり、ツアーバスにもこういうシステムができると指針にはなるだろう。
いずれにしても大事なのは、道路交通において、安全は自分で確保するものであるということだ。事業者がすべての安全性を担保する鉄道とは大きく異なり、道路交通は道路、運行者、利用者が、それぞれの立場で安全性を追求する形になっている。国政のチェックからバスの選定、乗車中のマナーまで、すべては国民次第なのである。
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