《検証・民主党》農業--1兆円掲げ与野党が激突、政局に翻弄されるコメ農家
「この生産調整というか需給調整は当然やっていかなければいけないと思います」
高橋議員は、「いわゆる強制減反に当たる生産調整と、わが党が掲げる需給調整は異なる」と釈明したが、現在の生産調整との違いが判然とせず、堂々巡りのやり取りが続いた。そして自民党議員の攻撃の矛先は1兆円の積算根拠にも向けられた。
ここでも民主党議員は答弁に窮した。その揚げ句に、「1兆円という額は必要ではないかということでスタートしたのが正直なところ」「1兆円の捻出について知恵を貸していただければありがたい」(平野議員)などと自民党に助けを求めた。
このように民主党の法案は生煮えで提出されたが、野党が多数を占める参議院で11月9日に可決し、実績を世間にアピールした。
自民党も新たな対策を打たざるをえなくなった。この年の秋、米価が空前の安値を記録したためだ。
「背筋が凍るほど、農政不信が高まっていた」と話すのは、自民党農業基本政策小委員長の西川公也衆議院議員だ。当時、各地の農業者の集会に出席した西川議員は、「会場にむしろ旗が8本も10本も立っているのを目にした」と振り返る。
「旧食管法当時の米価闘争では、『米価を上げろ』の一本やり。ところが、今回見たむしろ旗は『俺たちを殺す気か』だから衝撃を受けた。農林水産省が急激な改革をやろうとしたのが原因だった」(西川議員)。
自民党は07年10月から12月にかけて、「緊急対策」を次々と繰り出していく。その内容は、1)政府による過剰米の買い上げ、2)500億円の補正予算を投じての生産調整の拡大、3)生産調整への国や自治体の関与の再強化、の3点。これらは、1995年以前の旧食糧管理法やその後の旧食糧法時代に多用された統制色の濃い手法であり、農水省が04年度以来進めてきたコメ政策改革と矛盾する内容を含んでいた。