"おもてなし"は「方程式」で標準化できる 急成長を支える「感動の技術化」とは?
山口:さて、日本のサービス業の成長戦略を考えたときに、ひとつ大きいのは、やはり生産性の問題です。国ごとの生産性を正しく横比較するのは難しいのですが、少なくとも日本のサービス業の生産性は大いに改善の余地があります。改善の方法はさまざまだと思いますが、どんな方策が有効だと考えられていますか?
「見える化」と「スタンダード化」が大事
杉元:サービス業としての生産性を上げるには、ズバリ、勝ちパターンをしっかりデータとして貯めて「見える化」して「スタンダード化」することが非常に大事だと考えています。
日本のサービス業における「おもてなし」的サービスでいうと、たとえ話で旅館の話がよく出てきます。属人的な経験値というか、女将さんのなかに経験によってストックされたサービスのことです。
しかし、これだと、そのつどそのつど教えてもらわないといけないから、生産性がなかなか上がらない。効率が悪いわけです。欧米式だと「こういうときにこういうことをすれば、お客さんにとっていいサービスになる」という、いわゆるマニュアルがあります。われわれの場合には、マニュアルというよりも、勝ちパターンを「見える化」して「スタンダード化」するという言い方をします。
私たちの会社は結婚式場を運営しているのですが、どのようにすれば「感動」的になるのかということも、「見える化」して「スタンダード化」しています。
結婚式の「感動」は、方程式で表せる
杉元:たとえば、結婚式の最後に花嫁さんがご家族、とくにお父さんに向けたお手紙を読む、そのときに照明はちょっと暗くして、切ない音楽をかけると、高い確率でお父さんが涙する、ということがあります。
これも、われわれから見ると「お手紙+照明を暗くする+切ないBGM=お父さんが感動する」といった方程式なのです。こういうことを、属人的に人に貯めるのではなく、データにして企業のノウハウとして貯めていく。それをできるかぎり「見える化」して、会社のスタンダードにしていく。
つまり、われわれは「感動の技術化」と言っていますが、そういうやり方でお客様に感動していただく確率を上げて、より多くのお客様に「感動」をご提供できるようになることが、すなわち、われわれの生産性を上げることにつながると、そう考えています。
山口:なるほど。生産性というと、どうしても分母である労働投入量をどう削るか、無駄をどう省くかに目が行きがちですが、いまのお話は、分子にあたる付加価値のほうをどう最大化していくかというお話ですね。
杉元さんに一度お聞きしたかったことなのですが、「感動創出方法を標準化する」といったお話は、業界の常識からは少しはずれているような気がします(笑)。杉元さんとお話をしていると、そういった独自の、業界の定石とは違う角度から考えられた経営方針がよく出てくるのですが、ユニークな発想を生み出すコツとか、普段心がけていることはありますか。
杉元:それはやっぱり「事件は現場で起こっている」というようなことではないでしょうか。まず、会社の最前線のメンバーの話を、できるだけ多くヒアリングして、キャッチアップするようにしています。付加価値を上げるサービスのヒントは、やはり現場にあります。それと、同業種での勝ちパターンばかりを参考にしていると、どうしても商品が類似してくるので、異業種の方とのおつきあいを積極的にするように心がけています。
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