三井住友が巨額の公募、熾烈な資本増強レース
こうした背景から見れば、三井住友FGが敢行した公募増資も狙いがわかりやすい。同行では第4四半期(09年1~3月)、昨年6月に1000億円を投じた英バークレイズ普通株の投資で532億円の減損が追加的に発生した。ただ、他のメガバンクよりも保有国内株の簿価が低いため、黒字決算を確保することも可能だったとみられる。
しかし、09年度も融資先の業況悪化が避けられず、貸倒引き当てや償却などの与信費用が膨れ上がることは確実。状況が悪いときには中途半端な利益確保に走るよりも、できるだけ損切りしておくのが財務戦略の常道だ。そこで引き当てを積み増し、与信費用を従来計画から1800億円多い5500億円とした。
さらに注目されるのは、繰延税金資産の取り崩しを決めたことだ。これで法人税等調整額として3000億円程度のコストが発生する。三井住友FGは他の2メガグループに比べて繰延税金資産の計上額が大きく、資本の質としてアキレス腱でもあった。同資産の計上額は08年9月末で1兆円強に上り、TierIの2割までという算入限度額を超過しているため、一部がTierIから控除される状態となっていた。
また9日に開いた会見で、三井住友FGの國部毅取締役は、増資で8%のTierI比率を維持しつつ、約5000億円程度の投資余力が持てる旨を発言。これは目下進行中の日興コーディアルグループの買収で、MUFGに資本余力の点で負けないことを宣言した形だ。
三井住友FGの赤字決算にとどまらず、資本余力のある銀行では09年3月期決算で思い切った損切りを進める可能性が高い。ただし、十分な余力がなく、資本調達力も限られる地銀は公的資金の注入を迫られる。今後、本格化する銀行決算の内容と、各行が打ち出す資本策が優勝劣敗を決める重要なカギを握っている。
(大崎明子 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)
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