「性的倒錯」、深すぎて繊細すぎる本当のこと だれもが「愛の逸脱」を秘めている

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たとえば「有害」ということについて考える時、相手が人間でない場合にどうなるのかという疑問も湧いてくるだろう。これに対して、いわゆる獣姦という古典的なテーマについて触れられるのはもちろんのこと、鳥に対してのみ強烈な願望を抱く「鳥性愛」、隅・割れ目・裂け目・亀裂といったものに性的な興奮を抱く「隙間性愛」。そして自分の性感帯にアリ、ゴキブリ、かたつむり、カエルといった小動物をおいて、小さな口でかじられるのを楽しんだりする「昆虫性愛」というパターンまでもが紹介される。

なかでも興味深いのが、「対物擬人化共感」と呼ばれる症状をもつ対物性愛者の人々である。あるスウェーデン人の女性はベルリンの壁に夢中になり、ベルリンの壁と結婚した。ベルリンの壁がなくなった今、彼女は自分を未亡人だと思っているそうだ。

エッフェル塔と結婚した女性

エッフェル塔と結婚するとは!(写真:Tara-san / PIXTA)

また、米国人のエリカという女性には、エッフェル塔と結婚した記録が残されている。彼女はエッフェル塔を女性として見ていたので、レズビアンの関係であったそうだ。ちなみに、彼女がそれ以前に関係があったのは男性としてのゴールデンゲート・ブリッジであったというから驚くよりほかはない。

これらの人々の多くは「有害か、否か」という線引きで見られるだけでも、救われる可能性があるのだ。そして数々の事例を紹介していくだけでなく、特有の性的刷り込みがどのようになされたのかという要因へも肉薄していく。

LGBTと呼ばれる人達への理解を深めようと、社会全体が変わりつつある昨今である。だが、歴史的偏見を正すことを急ぐあまり、私たちは社会として、性的多様性全体との不安定な関係を仔細に検討する絶好の機会を逸しつつあると著者は言う。LGBTの枠に入り切らない人たちは、いまだに数多く存在しており、自ら選択したわけでもない性的性質を保持しているというだけで、苦悩にさいなまされているのだ。

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