“売れない”かんぽの宿、オリックス一括売却への難癖で、ますます隘路《不動産危機》

年金関連施設は“分離方式”で譲渡益

かんぽの宿やメルパルクは、国が法律によりあらかじめ事業の廃止・譲渡を決めたもの。にもかかわらず、その売却作業を日本郵政の経営判断に委ね、柔軟な売却をできるようになっている。ここに問題の根因がある。廃止・譲渡事業は日本郵政から切り離し、別機関で売却を行えば、こうした問題は発生しなかったはずだ。

実際、当事者から分離した方式での売却を進めて実績を上げている例がある。厚生労働省(社会保険庁)が厚生年金、国民年金などの積立金を原資に建設・運営してきた厚生年金会館、サンピア、ハートピアなど合計365施設の売却を進めている「年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)」だ。

RFOは年金制度改革の一環として、保険料を財源に建設、維持されてきた福祉施設の全面廃止が決まったことに伴い、05年10月に発足した独立行政法人。社会保険庁から施設そのものを現物で出資を受け、5年以内にすべての施設を売却することが決まっている。ちなみにRFO理事長は、西川・日本郵政社長が三井住友フィナンシャルグループ社長だった時期に三井住友銀行副頭取を務めていた水島藤一郎氏。日本郵政同様、RFOの経営中枢を担っているのも、同行からの出向者だ。

今年2月末までにRFOが売却した269物件のうち簿価割れでの売却を行ったものは10件にすぎず、合計で647億円の売却益を上げている。RFOは、かんぽの宿のケースとは異なり、事業継続や雇用継続は求められていない。しかし結果的にRFO発足から昨年9月までの時点の実績で、74%の施設で売却後も事業が継続されている。雇用に関しても5割以上の雇用を継続した施設が59%、一部継続を含めれば71%の施設で雇用は維持されている。

その理由は、RFOが民間経営になった後も事業を継続できるよう売却前にコスト削減などの指導をしているためだ。「開発目的だと土地代しか評価されない。転用目的だとそこに建物代が加わる。しかし事業継続が前提になると土地代、建物代、従業員がすべてプラスの価値として評価される。少しでも高く売るためには事業継続をしたほうがいい」(RFOの山路淳・企画部長)。

もともと地方自治体による誘致などにより建てられた施設が多いこともあり、売却に当たってはすべての施設において関係地方自治体の意向を確認している点も、日本郵政の売却手法とは大きく異なっている。


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