J−REITのリファイナンス動向 有利子負債、レンダー構成の現況分析《スタンダード&プアーズの業界展望》
最近のリファイナンス動向で注目されるのは、借り入れ期間の短期化、金利スプレッドの拡大、厳しいコベナンツなど、調達条件がこれまでより悪化しているケースが多い点である。多額のアップフロントフィーを要求されることもあり、負債調達コストがJ−REITの財務に与える影響が大きくなっている。その半面、TRE、JREのように、格付けJ−REITでは、借り入れ金利のベースとなるTIBORなどの市場金利が低下している環境下、長期の借り入れへのシフトを図るケースが増えており、J−REIT間の信用力の格差が顕著となっている。
また、これまで元本は返済期日に一括弁済するブレット型の借り入れが中心だったが、最近ではフロンティア不動産や日本プライムリアルティの調達事例のように、アモチゼーション(分割償還)付きの借り入れを行うケースが出てきている。また負債額を圧縮するため、物件売却によって既存借り入れを弁済するケース、減価償却やその他の手元資金で一部弁済し、借り換え額を小さくするケースなどが見られる。
投資法人債の償還は2010年、2012年がピーク
2008年から、J−REIT各社は、信用市場の混乱による投資法人債の発行条件の大幅な悪化を受けて、発行を見合わせている。J−REIT41社の投資法人債の発行残高は約6,300億円で、格付けJ−REITの投資法人債の発行残高はこの5割以上を占める。これまで無担保、無保証、優先投資法人債の発行が主流だったが、最近では、DAオフィス投資法人(格付けなし)の物上担保付投資法人債(2008年11月発行)、産業ファンド投資法人(格付けなし)の劣後特約付無担保投資法人債(2009年2月発行)など、厳しい市場環境を背景に発行条件は多様化している。
2009年中に償還期限を迎える投資法人債は690億円と全体の約1割で、その大半が9月以降に償還される(図2)。償還のピークは2010年(約1,500億円)と2012年(約1,600億円)である。投資法人債のスプレッドが大きく拡大するなか、金融機関からの借り入れで借り換えるという傾向は、信用市場の混乱が収束しなければ、続きそうだ。格付けJ−REITにおいては、日本ビルファンドと日本プライムリアルティが2009年中にそれぞれ100億円の投資法人債の償還期限を迎えるが、両社とも、金融機関との良好な取引関係、未使用のコミットメントラインを含む十分な手元流動性を有しており、リファイナンス・リスクはある程度限定されているとみられる。