東芝、重すぎるNANDへの5000億円投資 四日市に半導体の新工場建設へ

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足下の業績は、家電関連や電力・社会インフラで赤字を計上。安定的に利益を出していた医療機器のヘルスケア事業は、キャッシュ創出のためにやむなく売却することが決まっている。フラッシュメモリは今後もデータセンター向けになどに需要が拡大するとみられており、着実な収益を生み出せる唯一の頼みの綱なのだ。

昨年12月21日にリストラ計画や業績予想を発表。室町正志社長は、今後は半導体と原子力を主とする電力を2つの柱とする方針を表明した(撮影:尾形文繁)

東芝は今後、半導体と原子力を主とする電力を2本の柱に据えるとしている。半導体は毎年一定の投資が必要な金食い虫。四日市の新工場建設後も毎年、継続的な設備投資が必要になってくる。また、四日市工場は既に5つの半導体の製造棟がありそこへの投資も手を緩められない状況だ。

電力関連も先行投資が大きく、キャッシュが入ってくるのは数年先となる事業だ。柱となる2つがいずれも資金を先食いするバランスの悪い事業構造で、これが資金繰りをさらに悪化させる。

半導体は投資継続を可能にする分社化も課題

みずほ証券の松本英樹クレジットアナリストは、「フラッシュメモリは外部資本、新たなパートナーとの運営など、自分達の負担を軽くするのも一つの考え方だ」と話す。東芝の室町正志社長も半導体事業を分社化し、上場させることについて否定はしていない。いずれにしても現状では継続的な投資をすることは難しく、新規上場することや、コアでない事業の売却をもっと積極的に行うことも、しなければならないだろう。

また、半導体市況もいつまでも現状のままではない。元々浮き沈みの激しい業界だが、フラッシュメモリについては、これまでは3社がほぼ独占している安定的な市場だった。だが、技術力を上げてきた中国メーカーが少しずつ参入して、競争も激化しており、足元では売価も徐々に下がってきている。半導体で技術的な優位を維持するには、安定的な資金調達を可能にするような、事業体の見直しも迫られていることは確かだろう。東芝の構造改革に残されている時間は少ない。

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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