みずほフィナンシャルグループが苦渋の決断、劣後債の「コール」せず
3月30日、社債市場関係者に激震が走った。みずほフィナンシャルグループが、4月27日に最初の任意償還期日が到来する15億ドルの永久劣後債(2004年海外発行)で「コールしない」(償還しない)と発表したのだ。
優先出資証券や劣後債は社債の一種で、利息や配当の支払い、期限の柔軟性によって一定の資本性が認められる。その分、普通社債よりも利息や配当金は高い。銀行監督上、適用される自己資本規制(いわゆるBIS規制)でも資本として認められる。
期限の定めがなければ資本性は高くなるが、投資家にとっては一定期間で償還されなければ不自由。そこで任意償還日を決めて最初の任意償還日に償還し、償還分を新たに発行することが市場慣行となっている。
だが現在、信用市場が収縮している中、新規の発行コストは大幅にハネ上がっている。借り換えれば年利10%台になるとみられ、発行体にとっては従前のものを期限延長したほうがコストは安い。
そこで今年1月、ドイツ銀行は劣後債のコール見送りを発表。金融機関のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のスプレッド(社債デフォルトの保険料)がハネ上がり市場は大混乱した。
機関投資家向けでは短期の償還が期待されており、その分金利が低い。ドイツ銀行がコールしなかった劣後債はこのタイプで、市場からは「裏切り行為」「それだけ財務が苦しい」と受け止められた。
他の2メガはコール
今回、みずほがコールしなかった劣後債は若干タイプが異なる。リテールの富裕層向けで、金利が8・375%と相対的に高く、償還しない可能性を一定程度織り込んでいるとされ、外銀も同様のものでコールを見送る動きが出ている。みずほは4月15日に任意償還日が来る機関投資家向けの金利4・75%のものはコールするとしている。
それでも三菱UFJフィナンシャル・グループや三井住友フィナンシャルグループは昨年、リテール市場向けでもコールした。このため「ルール違反ではないが、みずほの財務はやや苦しいのではないか」との見方が広がっている。
昨年から3メガバンクとも、機関投資家から事業会社、さらには個人にまで出し手を求めて自力で資本調達に奔走しているが、調達機会は狭まってきた。
一方、貸し渋り対策の名の下で行政は公然と「有利な資本調達の枠組みが整備されている」(佐藤隆文金融庁長官)と公的資金の利用を迫る。しかし、民間経営者にとって税金導入を回避する努力を続けるべきなのは言うまでもない。みずほにとっても、苦渋の選択だったといえる。
(大崎明子 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら