オートサロンの存在感が格段に上がった理由 単なる「改造車のお祭り」ではなくなった

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はね上げ式のドアを採用したカスタムカーに来場者も興味津々(撮影:梅谷 秀司)

3つめには世界のアフターパーツの商談の場となっていることが挙げられる。たとえばアフターパーツの中でも主要なアイテムの一つであるホイールは、メーカーがこの東京オートサロンに間に合うようにサンプル品とカタログ類を製作する。

それが会場で展示され、卸業者や販売店、海外のディストリビューターがオーダーを入れるワケだ。もし、この会期に間に合わないとすれば、メーカーは新商品の発売を1年待ったほうが良いともいわれている。ホイールだけでなくさまざまなアフターパーツの商談が行われるから、ビジネスで訪れている来場者は真剣だ。

今の会場はもう満杯、外国人客への対応も課題に

一方で、課題もある。筆者は世界中の国際モーターショーだけでなく、クラシックカーやスポーツカー、レースなどクルマに関する多くのイベントを取材して、そのコンセプトや参加する人々の楽しみ方を見てきた。

ホイールメーカーはオートサロンへの出展を最重視(筆者撮影)

そこではイベントの規模拡大を追求するよりも、イベントをより細分化し、そこに参加するための制約など希少性をアピールするような動きもみられる。北米で毎年8月に行われる「モントレー・カーウィーク」(ペブルビーチ・コンコースデレガンスが有名。)などは大人の楽しめるクルマイベントをめざし、厳密な人数制限が行われることもある。

ひるがえって東京オートサロンは動員数の拡大を重視しているようにみえる。東京モーターショーでも同じことを感じる。その意味はよく解るが東京オートサロンを取材する限り、ここ数年の会場はかなりの混み具合で、人気ブースは押し合い、へし合いだ。現在の規模の会場で開催するなら、参加者をこれ以上増やすことがはたして良いことなのかと疑問にも思う。

訪日外国人が急増している中で、海外からの参加者をどうもてなしたらいいかという問題もある。東京オートサロンの初日である1月15日(金)は午前中から15時までは出展社と報道の関係者のみが原則として入場可能だったのだが、昼頃に取材を中断して会場の外に出ると、「誰か英語話せる人いませんかー」と会場整理スタッフが叫んでいた。

彼の前にはそれなりのコスプレで着飾ったヨーロッパ系と思われる若い男女グループがワイワイやっていた。要は「たくさんの人たちが入場しているのに、なぜワタシ達は入れないの?」と不満だったようなのだ。確かに英語の公式ウェブサイトを見ればよいのだが、エントランス付近には英語による細かい記載はないし、彼らが不安になるのもわかる。

東京オートサロンはクルマそのものだけでなくアフターマーケットパーツビジネスのトレンドを掴む為に欠かすことのできない展示会であり、それらマーケットが大きく拡大しているアジア諸国をはじめとする海外からの参加者は年々増えている。それだけでなく日本のアニメやコスプレを神と仰ぐ若いジェネレーションたちにとっても東京オートサロンはもはや有名であり、そこにもう少し目を向ける必要もあるだろう。

越湖 信一 PRコンサルタント、EKKO PROJECT代表

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えっこ しんいち / Shinichi Ekko

イタリアのモデナ、トリノにおいて幅広い人脈を持つカー・ヒストリアン。前職であるレコード会社ディレクター時代には、世界各国のエンターテインメントビジネスにかかわりながら、ジャーナリスト、マセラティ・クラブ・オブ・ジャパン代表として自動車業界にかかわる。現在はビジネスコンサルタントおよびジャーナリスト活動の母体としてEKKO PROJECTを主宰。クラシックカー鑑定のオーソリティであるイタリアヒストリカセクレタ社の日本窓口も務める。著書に『Maserati Complete Guide』『Giorgetto Giugiaro 世紀のカーデザイナー』『フェラーリ・ランボルギーニ・マセラティ 伝説を生み出すブランディング』などがある。

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