要介護認定の新方式で混乱、介護認定の軽度化で利用に支障のおそれ
介護保険サービスを利用するうえで、誰もが必ず受けなければならないのが、市町村による「要介護認定」という手続きだ。
実際の手順としては、「認定調査員」と呼ばれる市町村職員や市町村から委託された民間事業所のケアマネジャーが、介護の手間がどれくらいかかっているかを高齢者本人や家族から聞き取ったうえで、その調査データがコンピュータによって処理される。これが「一次判定」という作業だ。そのうえで医師や看護師、ケアマネジャーなど、1グループ4~5人で構成される自治体の「認定審査会」で介護の必要度が審議され、要介護度(要支援1から要介護5まで7段階)が決定される。
要介護度に応じて、受けられる介護サービスの種類や時間が決まるため、要介護認定は適切に行われなければならない。だが、要介護認定の結果(要介護度の分布)が自治体によってまちまちであることが、厚生労働省の調べで判明。同省は是正のための要介護認定の仕組みの見直し作業を進め、4月1日から新たな制度に切り替える手はずだった。
ところが、実施直前になって大きな問題が発生した。認知症高齢者の家族や医療・介護関係者から、「従来よりも要介護度が軽く出る人が続出する可能性が高い。新たな仕組みは実施を凍結すべき」(林泰則・全日本民主医療機関連合会事務局次長)との指摘が持ち上がり、厚労省が対応に追われているのである。
寝たきりが「自立」で混乱
「寝たきり状態の母親は自立していると見なされて、施設から退所を迫られることになるのでしょうか」
「認知症の人と家族の会」富山県支部の勝田登志子事務局長は、特別養護老人ホームに母親を預けている家族から、電話でこんな相談を受けたという。厚労省が公表した新たな認定調査員向けテキストでは、寝たきりでも実際に介助を受けていなければ、「自立(介助なし)」の項目にマルを付けるのが正しいとの記述があり、新聞やテレビが「寝たきりでも自立扱い」と報じたためだ。
「認定結果のバラツキを極力なくすことを目的とした」(鈴木康裕・厚労省老健局老人保健課長)という新テキストの記述が、予期せぬ形で利用者に大きな衝撃を与えたのだ。
たとえば新テキストでは「排尿」に関して次のような記述があった。