要介護認定の新方式で混乱、介護認定の軽度化で利用に支障のおそれ

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 「あくまで適切な要介護認定が目的。介護給付費を削減する狙いはまったくない」と鈴木課長は力説する。だが、新旧テキストの比較のための調査で、従来より軽度になる人の割合が重度になる人の割合を大幅に上回ることが判明。「要介護認定という入り口の段階で介護保険サービスの利用者を減らす意図があるのではないか」(服部万里子・立教大学教授)との指摘がある。

問われる厚労省の説明責任

新たな仕組みでは、認定調査員は、身体の能力や介護の必要性ではなく、現に介護を受けているかどうかを高齢者から確認したうえで、「一部介助」や「全介助」などの項目にマルを付ける。そのうえで、今までより多くの介護を必要とする場合は、一次判定の調査票に設けられた「特記事項」の欄にその趣旨を記述する。また、主治医の意見書でも介護の必要性を明記することが求められている。

ここでの問題は、特記事項や主治医の意見書を基に、最終的な判断を行う認定審査会できちんとした決定がなされるかだ。だが、現在、多くの自治体の認定審査会では、1件当たり2~3分程度の短時間で審査されているのが実情だ。そうした中で、たとえば、元気な認知症高齢者や介護する人がいない独居高齢者の介護の必要性などが見落とされるリスクが指摘されている。また、審査会メンバーに対する新テキストの説明も不十分で、自治体から変更内容をきちんと聞かされていない医師もいる。主治医への周知も十分とは言いがたい。

認定結果に不満がある人は、都道府県への不服審査請求や市町村への認定区分変更申し立てといった救済措置がある。だが、前者は時間がかかるうえ、主張が認められたのは少数。後者のほうが現実的だが、要介護度が是正される保証はない。

要介護認定制度に詳しい住居広士・県立広島大学教授は、「認定の仕組みは介護時間という量的評価に偏っている。家族の介護負担度や本人の必要度をもっと考慮し、これら三つの軸から総合的に認定できるシステムに変更すべきだ」と指摘する。

介護保険の信頼性を守るためにも、厚労省は利用者が納得する対策を講じるべきだ。

(岡田広行 =週刊東洋経済)

※写真はケアプランの作成現場 本文とは直接関係ありません。撮影:梅谷秀司

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