静岡空港が6月開港へ、石川知事の辞任でも残る懸念
静岡空港の開港が6月4日に正式決定した。就航路線は国内外6社による8路線で、景気悪化を受けた地方路線の廃止・減便が相次ぐ中では健闘といえる。
同空港は、測量ミスが原因で敷地周辺に航空法の制限を超す立ち木の存在などが問題となり、3月開港を延期していた。そこで今回、滑走路短縮工事という暫定措置を施し、6月開港にこぎ着けた。 一方、完全開港を目指した地権者との交渉は進展せず。訴訟による立ち木の強制除去も視野に入れる中、3月25日には石川嘉延県知事が辞任を表明。会見では「地権者からの(辞任などの)条件を全面的に受け入れる」とした。完全開港にメドをつけた格好だが、問題を把握しながらミスを認めずに公表を先延ばしし、開港延期を招いた不手際の帰結といえる。滑走路短縮に加え、完全開港に向けた再延長工事で合計費用は約2億円弱かかる。
火種はまだ残る。この2月、2009年度予算作成過程で、日本航空(JAL)福岡便に対する搭乗率保証制度の導入が判明し、議会が紛糾した。同制度は搭乗率70%を下回れば無条件にJALへ税金補填するもので、業界でも異例の仕組みだ。
空席1座席当たりの補填額は1万5800円。割引運賃の一部はこの額を下回るため、実に手厚い収入補填といえる。開港初年度だと、70%を1%下回るごとに県の填額は3800万円、搭乗率が50%だったとすれば、その額は7億6000万円。県側は補填がほとんど発生しないとみているが、JALの1月の平均搭乗率は55%。7割を超える路線は数路線しかない。
静岡空港は05年にJALが就航表明したことで計画が進展した経緯もあり、JALはこうした恩を武器に“特約”を取り付けたようだ。だが、同空港に就航する全日本空輸(ANA)は「特定路線だけ補助がつくのはいかがなものか」(首脳)と反発している。来年度予算案でも結局、JALへの保証制度を適宜見直すという条件付きで承認され、禍根を残す格好となった。
不況が色濃くなる中、開港後の搭乗率が振るわなければ、JAL限定の「厚遇」に、ANAをはじめとした航空会社から不満が出る可能性もある。知事辞任を経ても、視界良好とはいきそうもない。
(冨岡 耕 =週刊東洋経済)
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