グラフや図解などプレゼン資料作成の詳細テクニックについては新著『資料作成ハンドブック』を、またダメ資料ランキングや改善テクニックについては、過去の記事をご参照いただければと思います。
「強さ」と「親しみやすさ」はバランスで決める
次は、「自分価値」の見せ方についてです。その説明をする前に、あるデータを紹介します。Googleの人事部で、「正しい意思決定ができているか」を検証するために行われた実験です。
同じプレゼンテーションを複数の人が行いました。その人たちには伝え方の上手下手の差が出ないように同じ説明になるよう練習したうえで被験者に対してプレゼンを行い、被験者はそのアイデアを選ぶかどうか採決をしました。その結果、男性が行ったプレゼンテーションの方が68%の確率で選ばれる確率が高かったそうです。
内容ではなく人によって判断が変わる……とショックを受ける方もいるかもしれませんが、キャリアアップを視野に入れたプレゼンテーションを考える際には最も意識すべき示唆が含まれています。
人は話を聞く時、つねに相手を値踏みしています。「この人の話を信じてよいのか?」、「この人の言うことを聞く気になるか?」を、プレゼンする人が部屋に入ってきて、第一声を発してから数分の間に判断します。つまり、プレゼンテーションを始める時には信じるに足る存在であることを証明する「強さ」と、この人の言うことなら聞いてみたいという「親しみやすさ」を感じさせる必要があります。
この2つを同時に感じさせるのは実はとても難しいのです。強さと親しみやすさはシーソー関係にあるからです。強そうな相手には、親しみやすさはなかなか感じにくくなりますし、親しみやすさは弱さを感じさせることもあります。
私の例を紹介します。私が若手コンサルタントだった頃、まだ提案前でクライアントにお会いしていないにもかかわらず先方の役員から「うちの現場は荒っぽいから女性のプロジェクトマネージャーは困る」と言われたことがあります。このように女性には「強さには欠ける」という古典的ステレオタイプの見られ方が付きまといます。
それがキャリアを積んでくると「清水さんは怖そうで近寄りがたいと思ってました」ということを役員の方から言われることが増えてきました。コンサルタントという職業や高いポジションなどは一般的に「強さはあるが、親しみに欠ける」という印象になるわけです。
「強さ」と「親しみやすさ」は、自分と相手との関係で決まります。まずは相手が自分にどんなイメージを抱いているのか、強さなのか親しみやすさなのかを把握することが出発点になります。
前述の私の例でいうと、「女性では困る」または「仕事の能力が低い」と思われているのであれば、意識して強さを演出していきます。「近寄りがたい」と思われているのであれば、逆に親しみやすさを意識して前面に出していくわけです。このバランスがとれると、「強くて親しみやすい」という最強の自分価値を感じさせて相手の懐に入ることができます。
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