日立「本業回帰」の成算、トップに異例のベテラン復帰だが…
日立の本業回帰には収益安定化に加え、もう一つ理由がある。電力分野の信頼回復である。古川社長も「新社長が電力分野から選任されたことには、正直なところ安心している」と心情を語る。
古川氏が「社長在任期間中で最も強烈な記憶」として挙げるのは、06年6月15日に勃発した、中部電力の浜岡原子力発電所でのタービン発電機の羽根損傷事故。同発電機は日立が設計・製造した。「今でもまだ日立には事故の後遺症がある。収益安定化と信頼回復のためにも、電力とそれ以外の事業とを両輪としてきちんとしないと」(古川社長)。その点、川村氏は火力発電機の国産化を成功させるなど、発電プラント技術者としての実績も十分ある。
攻めより守り重視
日立は今年7月に、「課題事業」と位置づける自動車機器とデジタル家電を分社化する。それにより他社との提携は容易となり、事業リスクは軽減される。「従来は攻め6割、守り4割だったが、今後は守り6割、攻め4割でいく」(川村氏)。また子会社社長を務める三好崇司氏を日立本体の副社長に呼び戻すなど、経営陣にもベテランをそろえる。
ソニーは米国CBS出身のストリンガー氏に改革を委ねたが、日立は対照的に「本流」の経営陣が主導し、電力・電機など社会インフラ事業へ回帰する。「来年の発足100周年はしかるべき業績としたい」(庄山氏)とするが、残された時間は短い。
(石井洋平 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)
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