アフリカを覆う「難民問題」の厳しすぎる現実 報道写真家が現地で体験したこと

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南スーダンの女性たち

赤道直下の太陽がじりじりと肌を焼くのが感じられる昨年の春、筆者がいま滞在しているウガンダの北部、南スーダンとの国境近くの難民キャンプで、太鼓のビートに合わせ、のっぽの女性達が、完全なシンクロで上下に跳ねていた。

これは南スーダンの伝統的なダンス。はじめはその不思議さに驚かされるが、写真を撮っていて心を引きつけられたのは、やはり彼女達の厳しい顔だった。

タフさが作り出した厳格な顔

1960年代にイギリスから独立後、40年間戦われた南北間の内戦後、2011年に独立を果たした南スーダン。だがわずか2年後の2013年12月に、前副大統領を支持する軍の一部と大統領警護隊が衝突。この派閥争いは、大統領の部族で、南スーダン最多のディンカ族と、2番目の人口を擁する前大統領のヌエール族の対立にエスカレート。約1万の死者が出たうえ、220万人、国民の7人にひとりが家を追われる。祈願の独立と終戦を迎えるが、それは長続きせず、祖国に対する失望と、生きて行くために必要なタフさが作り出した厳格な顔が、上下に躍っていた女性達の顔にあった。

ソマリア難民のスマイヤちゃん

報道写真家として直面してきた人々の苦難を、私の写真を通じて心で感じ、共感して欲しいと、今までシャッターを切ってきた。だが、その苦境の中に、希望の灯火のようなものをカメラで捕らえることができた時、小さな幸せを感じることができる。

ソマリア難民のスマイヤちゃんは、教育の大切さや彼女の将来について難民キャンプに設けられた学校で話していたところを、2年前に撮影していた。

難民キャンプ内の高校を卒業したあと、数の限られた生徒はエチオピア内の大学に入学することが許されているが、キャンプを除くエチオピア国内の就労は許されていない。生徒達は「将来は医者さんになりたい」、「僕はエンジニア!」、「わたしは先生!」と、胸をはって宣言する。しかし、ソマリアに帰郷できる見込みがあるわけではない。彼女の未来も明らかではないが、恥ずかしがり屋のスマイヤちゃんが、ちらりと見せたスマイルは、私が探していた、小さいが明るい希望の灯火だった。

1月13~28日、京都・東本願寺しんらん交流館で大瀬二郎氏の写真展が開かれます。詳細はこちら

 

大瀬 二郎 報道写真家

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おおせ じろう / Jiro Ose

ミズーリ大学ジャーナリズム学部報道写真学科を卒業後、アメリカの新聞社を経て、現在フリーの報道写真家として世界各地で起こる数々の事象にカメラを向けて世界に発信している。2007年:the Pictures of the Year International (POYI)でAward of Excellence を受賞。Time、Newsweekのほか多数のメディアに写真を寄稿。ホームページはこちら

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