「1日1万歩で健康になる」は大きなウソだった 15年にわたる研究で"黄金律"が明らかに

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1つの大きな目安は、2カ月です。

なぜなら、2カ月であなたの「長寿遺伝子」にスイッチが入るからです。

長寿遺伝子の力

長寿遺伝子とは、体内で細胞の損傷を防いだり、エネルギー生産に影響を与えたりしている「サーチュイン(Sirtuin)」という酵素をつくるはたらきをもった遺伝子のことです。

2003年、アメリカのマサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ博士が、酵母の長寿遺伝子「Sir2」(サーツー)を発見しました。その後の研究によって、人間には「Sirt1〜7」までの7種類が存在することがわかっています。

長寿遺伝子は、誰もがもっている遺伝子であるにもかかわらず、普段は眠っていて、いつどのようにすれば活性化するのかまでは解明されていませんでした。ところが、その後もさらに研究が進められた結果、2012年にスウェーデンのカロリンスカ研究所によって「1日20分程度の中強度の運動を2カ月続けることで、長寿遺伝子のスイッチが入る」ことが証明されたのです。

ちなみに、「8000歩/20分」の生活を中断してしまうと、長寿遺伝子はどうなるのでしょうか? 

2カ月間ほど休むと、長寿遺伝子は残念ながら再び眠りに就いてしまいます。ですから、あなたの体内で眠っている長寿遺伝子を目覚めさせ、そして常に活性化させておくためにも、「8000歩/20分」のウォーキング生活を毎日続けてほしいのです。

青栁 幸利 東京都健康長寿医療センター研究所 運動科学研究室長

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1962年、群馬県中之条町生まれ。筑波大学卒業。トロント大学大学院医学系研究科博士課程修了、医学博士取得。
群馬県中之条町に住む65歳以上の全住民5000人を対象に、15年以上にわたり、身体活動と病気予防の関係についての調査を実施(中之条研究)。そこから導き出された「病気にならない歩き方の黄金律」は、世界中から「奇跡の研究」「中之条の奇跡」と称賛を浴びるほどの画期的な成果をもたらした。
現在は、高齢者の運動処方ガイドラインの作成に関する研究に従事し、国家的・国際的プロジェクトに主要メンバーとして関わっている。
研究結果をもとにした健康法「メッツ健康法」が、各自治体(奈良県をはじめとして和歌山県、群馬県、神戸市、横浜市など多数)に導入されたほか、大手企業の健康保険組合、警察庁などにも健康づくりの指標として取り入れられている。
NHK「あさイチ」「おはよう日本」「ためしてガッテン」などのテレビ番組や、各新聞、雑誌で「まったくあたらしい健康づくり」として取り上げられ、話題を呼んでいる。年間50本以上の講演を行うなど、全国各地からの引き合いも多い。
著書に『なぜ、健康な人は「運動」をしないのか?』(あさ出版)など多数。

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