【産業天気図・造船・重機】厚板値下げなら造船に浮揚力。が、エネルギー分野にカゲリ。「軽」は大苦戦中

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  09年4月~9月   09年10月~10年3月

造船・重機械業界は2009年度いっぱい、どんよりした「曇り空」だが、ところによりすでに雨が落ちてきている。後半にかけ強風波浪注意報が発令される気配もはらんでいる。
 
 造船の新規受注は08年度第3四半期(08年4~12月期)年以降、ぴたりと止まった。足元、やや持ち直し気味とはいえ、海運市況の暴落、厚板(造船用の鋼板)価格の先安感から、海運会社が発注を見合わせているからだ。だが、造船各社は悠に3、4年分の受注残を抱えており、09年度の操業は保証されている。ドル建ての受注残については08年度中に1ドル90円台で為替の洗い替えを済ませており、思惑通り、厚板の値下げに実現すれば、その分、09年度以降の収益は押し上げられることになる。
 
 重機械分野も、発電プラントを中心とするエネルギー関連は、造船同様、豊富な受注残に支えられている。ガスタービン、大型ポンプ・コンプレッサーなどの繁忙感は相変わらず。ただし、一部に変調が見えている。とりわけ、IPP(独立電力事業者)が主導する民間プロジェクトは昨秋以来、国際金融市場の信用収縮が直撃。三菱重工<7011>は風力発電を新しい柱として強力に育成中だが、08年度第3四半期の風力発電の受注量は前年同期を4割も下回った。

ブレーキがかかったのは民間案件だけではない。サウジアラビアの国営石油会社アラムコが大型精油所の建設を先送りにしたため、千代田化工建設<6366>の08年度の受注は総額2100億円止まり。目標の4500億円のはるか手前で足踏みすることとなった。09年度上期、この発注調整の動きがさらに広がることになれば、さしものエネルギー分野も、下期以降は仕事量に不安感が出てくる。
 
 一足先に天候の急変に見舞われたのは、重機械工業の中の「軽」の分野である。受注生産で足の長い「重」に対して、「軽」は短納期の見込み生産。景気変動がストレートに響く。変減速機や射出成形機を収益柱とする住友重機械<6302>は、08年度第3四半期の受注が第2四半期に比べて半減し、第4四半期はさらに落ち込む見通しだ。09年度も「射出成型機は底ばい」を覚悟せざるを得ない。川崎重工<7012>も、欧米向け主体の大型2輪車が3割減となり、ロボットや油圧機器も底が見えない。これまで造船・重機械各社は、先行する住友重機、川重を範として「軽」化路線へのシフトを進めてきた。だが、現下の「軽」の苦戦が長引けば、業界ぐるみ中長期戦略の見直しを迫られることになる。

(梅沢 正邦)

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