コロナ後に「指示待ち社員」が絶滅する根本理由 ユニクロと米海兵隊に通じる「成長の方程式」

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ところが、日本企業では、これまで個人よりも会社の論理が優先される風土があった。経営者が下ろす課題を、ひな鳥のような社員が所与のものとして受け取り、効率よく解決していくことこそが是とされてきたために、個人の自律性も自走能力も養われていないのである。

あなたは「自律自走人材」になれるか?

「自律自走人材」になるためには、まず、自分自身が何者なのかを深く見つめて、人生の目的や意味を再発見し、自分の「志」を結晶化して、チームと共有することだと宇佐美氏は言う。

個人の「志」は、青臭くて気恥ずかしいものだが、それを互いに共有し合えば、チームとしての「志」を持つ個人の連帯が生まれ、強い絆で状況変化にも臨機応変に対応し、全員で立ち向かえる組織になるという。

ここでふと、もともと終身雇用制がとられていた伝統的な日本企業ならば、社員は会社に高い忠誠心や愛着を持ち、絆も強いのではないかと考える。だが、そのようなイメージはもはや過去のものだという。

2011年から2012年にかけて行われた調査によれば、日本で「会社と強い結びつきを感じている」と答えた人の割合は、たったの7%。他国を見ると、アメリカ30%、オーストラリア24%、イギリス17%、ドイツ15%で、日本は先進国中、最も低い数字だった。ただし、宇佐美氏の主張は、決して「欧米企業並みになろう」というものではない。そこには行きすぎた個人主義のわなが潜むと考えるからだ。

あくまでも、会社やチームに重きを置く本来の日本人・日本企業ならではの特質を生かして、個人を「自律自走人材」に育てることで、欧米企業にはまねのできない強いチーム能力を生み出すようになるというのが「リード・ザ・ジブン」の目的なのである。

宇佐美氏の手法は重層的で、個人の深層心理へと掘り進みながら、地中深くに眠っていた情熱の間欠泉を掘り当てるような激しさも伴う。

まずは、自分の人生を振り返り、イベントごとのモチベーショングラフを記入した人生曲線を描くことで、自分の持つ要素や、価値観などを言語化し、熟考する。次に、この人生曲線をチームメンバー数人でシェアする。同僚や部下は、毎日顔を合わせていても、実は知っているようで知らないところがあるものだ。

だが人は、お互いの物語を知れば知るほど、多面的に理解することができ、好感度や親密度が高まるという。絆づくりには大切な作業なのだ。人生曲線をシェアしてフィードバックし合うことで、自己肯定感が高まる効果もあるという。

もちろん厳しい意見も出るが、自分自身すらあまり振り返って来なかった自分の人生に対して、他人が注目してくれることは、貴重な体験となる。宇佐美氏は、この自己肯定感こそが、自分にも「志」を実現できるのではないかという自信を醸成することにつながるという。

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