次世代電池の最有力候補「全固体電池」の現在地 研究室では一部成果も、実用化までは茨の道
リチウムイオン電池を超えるのに四苦八苦
――全固体電池になればEVは航続距離が飛躍的に延びる、充電時間が短縮されるなどと言われています。さらに全固体電池を搭載したEVを2022年にも市場投入すると発表したメーカーもあります。一方、全固体電池が現行のリチウムイオン電池を大きく上回る性能を実用できるか疑問の声もあります。全固体電池で飛躍的な性能向上は可能なのでしょうか。また研究室レベルではどこまで「見えている」のでしょうか。
明確に答えるのは難しい質問だが、材料の基礎研究の立場から説明したい。
まず、電池というのは正極と負極と電解質の組み合わせでできている。正極と負極でエネルギーが決まり、電解質が抵抗になる。電池は発明されてから長い期間、電解質には水溶液を使っていた。それが有機溶媒系に変わったのがリチウムイオン電池だ。これで使える電圧が一気に上がり、エネルギー密度(体積や重量あたりの容量)は格段に高まった。リチウムイオン電池は本当に革新的な電池だ。
次のステップとして、多くの人々がリチウムイオン電池を超える電池を作ろうと試みており、1つの可能性として固体電池がある。しかし、リチウムイオン電池があまりにもすばらしいので、なかなかそれを超えることができず、われわれも四苦八苦している。
――電解質を固体にすれば性能が大きく向上するのではないのですか。
エネルギー密度は基本的に正極と負極で決まるので、電解質が固体になったからといって、基本的にそんなに変わるわけではない。固体電池を研究してきたわれわれは固体電池にメリットがあると言ってきたが、なかなか示すことができていないのが実情だ。
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