黒字倒産も出るほど深刻な「採用難」への対処 地方・中小企業では人手不足が死活問題に
2018年9月時点の有効求人倍率は1.64倍で、1974年1月以来の高水準になりました。また、同月の完全失業率は2.3%でした。求職者にとっては、選ばなければ仕事は見つかるという状況ですが、採用する側の企業にとっては、優秀な人を集めるどころか、必要な頭数を集めるのにも苦労する厳しい状態といえます。
2017年の総務省「労働力調査」によると、年間の転職者は311万人。5年前の2013年と比較すると、約24万人も増加しています。雇用者数はおおよそ6000万人ほどですから、20人に1人が転職していることになります。
中小企業の採用ハードルは上がっている
特に、もともと中途採用が多く、人の出入りが激しい中小企業においては、転職は一層自然なことになっています。人が辞めやすい状況は進んでいる一方で、補充のためのハードルは上がるばかり。採用広告の予算を増やしても応募ゼロということも珍しくなく、説明会を開いても人が集まらない。ようやく面接にこぎ着けても予約を無断でキャンセルされるといった、不況時を思い起こせば考えられないような事態も当たり前のように起きています。
新卒採用の状況についても触れておきましょう。リクルートワークス研究所の「大卒求人倍率調査」によると、バブル時代の1991年3月卒に2.86倍を記録し、これが調査史上のピークでした。そしてバブル崩壊後は一気に倍率の低下が起こり、2000年3月卒の0.99倍という最も厳しい数字となりました。
リーマンショックによって景気が急激に悪化する前には、2倍を超えるなど一時的な上昇はありましたが、おおむね1倍ちょっとという時代が長く続いていました。しかし、直近の10年間での推移を見ると、2012年3月卒の1.23倍を底にジワジワと上昇が続きます。
2019年3月卒は1.88倍となり、すでに実質的な採用活動が始まっています。2020年3月卒は2倍を超えるかもしれません。売り手市場になるほど就活生は大企業志向になる傾向がありますから、中小企業にとってただでさえ厳しい新卒採用がますます厳しくなることも数字の面から明らかなのです。
さらには、2018年9月、大企業の集まりである経団連の中西宏明会長は、大企業の採用過熱の抑止力となっていた就活ルールの廃止に言及しました。大学と政府はルール堅持に躍起ですが、大企業と採用時期をすみ分けていた中小企業への影響は必至です。