飼い猫も減少、僅差で飼い犬との逆転ならず 伯仲を受けたブームの中で問われる命の意味

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猫の殺処分が犬を上回っている一因は、狂犬病対策で管理が徹底している犬とは違い、野良猫が産み落とすなどして持ち込まれる子猫が多いからだ。子猫は体力が弱く引き取り後に病死する可能性も高いが、そうした場合でも、統計上は注射や炭酸ガスによるのと同じ「殺処分」扱いとなる。

2014年度は猫の殺処分数の59%に当たる4万7043匹が「幼齢個体」だった。この比率は2013年度の60%と、ほとんど変化がない。

 猫は年に3回まで出産が可能とされ、放置しているとすぐに増える。哀れに思って拾ってきた猫数匹が、不妊手術を怠っている間に異常繁殖して手に負えなくなる「多頭飼い崩壊」も後を絶たない。

「安易に購入するのはやめて」

飼育数が犬を上回るとの見方を背景に、テレビ番組などでは猫の露出が増え、ブームの様相を呈している。少子高齢化を背景に「癒し」を求めて飼う人も多いのかもしれないが、その裏では多頭飼い崩壊などの悲劇が起きている。飼い主が死去してしまい空家に残されたり、春の転勤シーズンに団地の近くに猫が捨てられていく光景を、筆者自身も何度も見た。

「2022年2月22日までに、日本の猫の殺処分をゼロに!」を合言葉に、東京、大阪、岐阜で里親探し目的の猫カフェ「ネコリパブリック」を経営する河瀬麻花さんは、飼育数増加に関して「単なる猫ブームで命を簡単に買うようなことはやめて欲しい。家族として、最期まで看取る覚悟で迎えて欲しい」と訴える。

「かわいい いっしゅん せわ いっしょう」。この標語は日本動物園水族館協会の動物愛護標語コンクールで、2012年度環境大臣賞を受けた。犬や猫の保護活動をしていて、目にしたことのない人はまずいないはずだ。

総務省統計局によると、昨年4月1日時点の15歳未満の子どもの数は34年連続減の1617万人。一方、ペットフード協会による昨年10月現在の犬と猫の国内飼育数合計は1979万匹とこれよりも多い。人と動物の比較は乱暴かもしれないが、日本ではこれほどの数の犬や猫が、パートナーとして飼われていることは認識しておくべきだろう。

駅 義則 東洋経済オンライン編集部

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えき よしのり / Yoshinori Eki

1965年、山口県生まれ。1988年に時事通信社に入社し、金融や電機・通信などの業界取材を担当した。2006年、米通信社ブルームバーグ・ニュースに移ってIT関連の記者・エディターなどを務めた後、2015年9月に東洋経済オンラインのエディターに。現在の趣味は飼い主のない猫の里親探し

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