中期的に見て「お見合い婚」はこんなに有効! 2回のデートで結婚した靖之さんの場合

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「妊娠約7カ月でわずか900gの男の子を帝王切開で産みました。見ているだけでかわいそうになるぐらい小さかったです。最初、妻は精神的にかなり参っていましたね。本当はもっと早くに産まないと母体が危なかったのですが、一日でも長く赤ちゃんをお腹の中にいさせてあげたいと妻が希望しました。母親はまさに命がけで子どもを守るのですね……」

現在も赤ちゃんは病院で治療中であり、出産でダメージを受けた真弓さんも実家で療養中だ。靖之さんは結婚半年にして東京でのひとり暮らし生活に戻ってしまった。

「こんなはずじゃなかった、と思うことはあります。妻と2人で子どもの面倒をみる家庭を思い描いていたのです。今は妻と子どもは実家の両親に守られていて、僕が出る幕はありません。でき上がりかけていた夫婦生活も中断してしまいました。子どもがなんとか育ってくれればいいとは思うのですが、寂しくないと言えば嘘になります」

義父の後押しで、アメリカ留学へ!

不安になる靖之さんの気持ちを察してくれたのは真弓さんの両親だった。いまはこういう状況だからサポートするのは厭わない。でも、メインはあくまでも君たちふたりが築く家庭だ。私たちはそれを応援する、と声をかけてくれたのだ。

実は、2回目の妊娠がわかった頃に靖之さんのアメリカ留学が決まった。学生時代とは違い、研究所による派遣のために給料も出る。研究に集中できる環境だ。靖之さんの研究分野は海外の研究仲間との協業が不可欠なので、人的ネットワークの中心地であるアメリカに行くことは大きなキャリアアップにもなる。

当初、真弓さんは靖之さんのアメリカ行きに芳しい顔はしなかった。東京での暮らしにも慣れない段階で、なおかつ子どもが産まれる予定もあったので当然だろう。そんなふたりの背中を押してくれたのは、やはり真弓さんの両親だった。

「義理の父は子どもがまだ小さい頃に留学をした経験があるのです。僕の留学を『またとないチャンスだ』と理解してくれました。妻には両親の影響がすごく強いので、お父さんの言葉を聞いた途端にコロッと賛成(笑)。来年の春からはアメリカに単身赴任をする予定です」

30代半ばを過ぎると、親から「早く結婚したら」とあまり言われなくなる。プレッシャーをかけても無駄だし可哀想だ、と思われるのだろう。しかし、靖之さんのように自分から心を開いていれば、親もしくは親しい叔父叔母が尽力してくれるかもしれない。

もちろん、肉親から紹介されたお見合い相手を簡単に断るわけにはいかない。だからこそ余計な駆け引きや計算をせずに結婚できるとも言える。

家族の温かみは、基本的には親から子へと引き継がれるものだと思う。愛情と理解に溢れた両親に育てられた靖之さんと真弓さんが今では男の子の親になった。しばらくは離れて暮らすとしても、3人の絆が弱まることはないだろう。
 

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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