トヨタ「シエンタ」が大ヒットした3つの理由

このコンパクトミニバンに時代が味方した

2代目シエンタの内装

総括すれば「時代が味方した」といえるのだが、その理由は大きく3つ挙げられる。まずは、日本で最も強力な販売網を持つトヨタ、それによって培われた固定客が待ち望んでいたコンパクトミニバンがようやく新型に切り替わり、潜在需要を爆発させたことだ。

シエンタには特異な経歴がある。初代シエンタは2003年9月に登場し、約12年という長期にわたって売られたモデルだった。全長は2代目よりも115mm短かったが、2代目にも受け継がれた後席の両側スライドドアや最大7人乗車が可能な3列シートの採用など、家族向けを中心として受け入れられやすい優れたパッケージは、すでに実現していた。

初代シエンタが果たした異例の復活

初代シエンタはいったん販売終了となったものの、「ダイス」シリーズ(右)などの追加により異例の復活を果たした

その初代シエンタは当初、「カローラ店」「ネッツ店」での併売だったが、2006年のマイナーチェンジ(一部改良)を機にカローラ店での専売モデルとなる。異例だったのは初代シエンタが2010年秋にいったん生産・販売を終了し、その後、2011年5月に生産・販売が再開されたことだ。

このときは従来の丸型ヘッドランプに加えて、異形角型ヘッドランプなどを採用した「DICE(ダイス)」シリーズなどの新グレードが設定されただけでなく、内装の質感を高めるなど随所を改良したマイナーチェンジで復帰を果たした。

当時はシエンタとボディサイズやパッケージなどで競合するホンダのコンパクトミニバン「フリード」が2008年に登場し、大ヒット。もちろん公式にコメントはしていないものの、トヨタがいったんシエンタの生産を打ち切り、新グレード追加や細部の改良を施して再登場させたのは、フリードへの対抗策だったに違いない。この復活劇は自動車業界でかなり注目された。

ただ、フリードが発売された時点で登場から5年近くが経過していたシエンタについて、当時のトヨタが現在に至る2代目へのフルモデルチェンジを周到に準備していたかどうかは定かではない。そもそもトヨタは「プリウス」や「カローラ」「ヴィッツ」「クラウン」「ノア/ヴォクシー」などの販売台数を稼ぐ戦略車種は5~7年程度でフルモデルチェンジを重ねている。

まったくの新型車にせよ、既存車種のフルモデルチェンジにせよ、新車の開発には4~5年以上の期間を要するといわれる。ひょっとしたら、フリード登場前後のトヨタはシエンタをフルモデルチェンジするつもりがなかったか、もしくは方向性を決めあぐねていたのかもしれない。フリードの大ヒット後、いったん生産・販売を打ち切った前後で2代目シエンタの開発に着手したとすれば、一応つじつまは合う。現在、車名別ランキングでトップクラスに食い込む戦略車種が、約12年という異例のモデルサイクルになったことがそれを物語る。

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