大衆迎合政治が日本を蝕んでいる--『反ポピュリズム論』を書いた渡邉恒雄氏(読売新聞グループ本社会長・主筆)に聞く
──消費税増税は民主党内でも踏み絵になりました。
増税反対と言っているが、増税分は何に使われるのか。主に社会保障費に使われるのだ。
民主党のマニフェストにある「コンクリートから人へ」は、ポピュリズムの象徴として後世に残る言葉ではないか。確かに自民党政権は、相当量の公共事業を進めた。新幹線を造ったり、高速道路を造ったり。また、公共事業として天災対策も行ってきた。自民党のやってきたことに批判はあるだろうが、これらをやってこなかったら、今どうなっていたか。
──ポピュリズムが蔓延する中での新聞の役割は何ですか。
新聞は、誤った政策を推し進める勢力や不正を犯した者をただしていく。批判する場合は、法律や社会常識・道徳を踏まえ、論理的・体系的に行わなければならない。新聞には、それができる。小選挙区制とマニフェスト至上主義が、日本の政治を決定的に悪くした。これらとの決別が、ポピュリズム政治から脱するためには絶対必要だ。
──「中型連立政権」を推奨しています。
日本の政治が「衆愚政治」に堕ちていくのを食い止めるのに、それ以外の道はあるだろうか。少なくともギリシャ、スペインは大失敗をした。原因はポピュリズムだ。この本でギリシャ危機を取り上げたのは、典型的な大衆迎合政治がその原因だったからだ。
日本も新しい政治の方向に行けば凋落は免れる。民主党と自民党が、第二の保守合同のつもりで一つの政党になることだ。自民党との連立で政権党としての経験を積んできた公明党も、連立政権に加わる能力がある。
わたなべ・つねお
1926年東京生まれ。東京大学文学部哲学科卒業。読売新聞社入社。ワシントン支局長、政治部長などを経て、79年論説委員長、85年主筆、91年社長、2004年会長、05年読売巨人軍会長。著書に『わが人生記』『ポピュリズム批判』『永田町見聞録』『ホワイトハウスの内幕』『派閥』など。
(聞き手:塚田紀史 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済2012年9月1日号)
『反ポピュリズム論』 新潮新書 735円 206ページ
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