大衆迎合政治が日本を蝕んでいる--『反ポピュリズム論』を書いた渡邉恒雄氏(読売新聞グループ本社会長・主筆)に聞く

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──原発や消費税への取り組み方にもポピュリズムが見て取れるのですか。

たとえば、脱原発と一口に言うが、原発の稼働を中止しても、その後も冷却し続けなくてはいけない。その費用も膨大だ。そうするよりも、最大限安全に稼働させて、前向きに技術を向上させるほうが大事ではないか。どうせ先はないのだと思うようになると、一所懸命に取り組む技術者が減って、かえって危ない。

大飯原発では、すべての電源を失った際に原子炉を冷却できる時間が、再稼働前はわずか5時間だった。蓄電池しかなかったからだ。それが今は冷却用の水の備蓄などによって、全電源が失われても16日間も冷却を続けることができるようになった。同じように改善すれば、佐賀県の玄海原発は既設の電源を失っても65日間に、鹿児島県の川内原発は104日間にまで冷却期間が延びる。福島原発をめぐって各種の事故報告書が出ているが、いずれも人災だと結論づけている。人災なら人間の力で防ぐことができるはずだ。

──では、再生可能エネルギーへの転換をどう評価しますか。

たとえば太陽光による電力。原発1基分の太陽光パネルといったら、東京のJR山手線の内側全体に相当する面積が必要だが、そんな場所は日本にはない。この前、太陽光電力を1キロワット時42円で買い上げると国会が決めたが、これこそよく考えもしない人気取りのポピュリズムだ。火力発電のコストは1キロワット時約12円だが、燃料代はどんどん上がっている。ホルムズ海峡で問題が起きたら、50円ぐらいにハネ上がってしまうかもしれない。これに対して原子力発電は、1キロワット時約9円でできるのだから、技術的に安全性を確保したうえで、稼働し続けたほうがいい。

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