エプソンが実現した「オフィス製紙機」とは? 4年越しで生み出した水を使わない新技術

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縮小

プロジェクトの始まりは、2011年夏にさかのぼる。きっかけは、プリンタメーカーとしての危機意識だった。碓井社長は語る。「エプソンは紙に印刷するための努力は続けてきたが、プリンタに使う紙のコストやエコなどの問題には取り組めていなかった。こうした課題を払拭しなければと思っていた」。

社長肝いりのプロジェクトを誰に委ねるべきか。ちょうどこの頃、エプソンはインクジェットプリンタに集中するために、レーザープリンタ開発の縮小を進めていた。そこで、白羽の矢が立ったのは、技術開発本部でレーザープリンタの開発をしていた市川和宏氏(現Aプロジェクト部長)だった。

「突然、福島米春常務から『コストやエコの面で、紙に印刷することにためらいを持つ人がいる。それを解決したい』という旨の電話がかかってきた。そこからすべてが始まった」と市川部長は振り返る。

市川部長はレーザープリンタの事業を進める傍ら、碓井社長とともにコンセプトを固め、1カ月後には実現に向けて動き出したという。メンバーは市川氏を含め、たった2名だった。

どうすれば水を使わずにできるか?

製紙機を作るという発想は、当初からあったものだ。簡単に紙を再利用できるようになれば、もっと気軽に印刷ができるようになると考えたからだ。ただ、オフィス機器として製紙機を作るには大きな壁があった。

シュレッダーでは残ってしまう情報も、ペーパーラボでは完全に抹消できる

古紙を再生するためには、紙を水でほぐす行程が不可欠のため、給排水設備が必要になることだ。「水を使った方法ではオフィス内で場所を選ばずに設置できない。まったく違う発想をしなければいけなかった」(市川氏)。

この壁を超えるべく、苦労の末生み出したのが「ドライファイバーテクノロジー」という技術だ。この技術では機械的衝撃を与えることで紙を一瞬で繊維化した後、色素を取り除く。

そうしてできた綿状の繊維に結合剤を加えて加圧し、再び紙にする。水を使わずに紙を再生する技術を生み出したことで、オフィス向け製紙機の実現に大きく近づいた。

ドライファイバーテクノロジーの技術構想ができてからは、開発はシナリオ通りだったという。2人で始まったプロジェクト規模はいつしか10人以上に膨らみ、その過程でさまざまな分野からメンバーを集めていった。プリンタ事業の印字技術、ロボット事業の精密機械技術など、社内にある技術をフル活用したことで、スムーズに開発を進めることができたという。

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