初代ロッキー宣伝マン、「クリード」を語る 若い監督の起用で浮かび上がった新たな魅力

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ロッキー1作目の宣伝用写真。当時は紙焼きの写真を媒体に配っていた

宣伝ヒットの極意は3H

――『ロッキー』の宣伝で学んだことはありますか?

僕は1作目と2作目を宣伝したんですが、1作目でオスカーをとったんで、2の時はスタローンを日本に呼びたかった。でも次回作があるからということで、なかなか来てもらえなかったという記憶がありますね。今はイベントを組んだり、キャストや監督を招聘することができますが、当時は映画の内容で売る時代だった。

浅川泰行(あさかわ・やすゆき)/ 現在は宣伝会社のレオ・エンタープライズ株式会社所属。『クリード チャンプを継ぐ男』ではチーフ宣伝プロデューサーを担当する

僕も年齢的に若かったから、ロッキーに影響されて生卵を3個飲みました。でもその後、病院に行ったら「スポーツをやっている人はいいけど、何もスポーツをしていない人が3個も飲んだらアウトですよ」と言われました(笑)。でもそこで知ったのは、宣伝する映画の中から何かを受け継ぐこと。そういう宣伝をしないと、映画を作った人に申し訳ないという気持ちがありました。

それから街の中を走るシーンにも影響されて、ロッキーと同じトレーナーを着て、朝、戸越銀座を走ったことがあります。映画と同じような感覚を得たかったんですよね。だから当時、上司から「浅川君、あまり映画化から影響受けないで。映画と同じようなことはやらないでよ」と言われていました。

 その後も、『リーサルウェポン3』をやったときは、メル・ギブソンが着ていたようなブルーのシャツとジーンズを着て、売り込みに行きましたし、他社作品ですが、『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』をやったときはジョン・ローンの着ていたトレンチコートがカッコよかったんで、同じようなコートを買って売り込みに行ったりもしたんですけどね。

――最後に、浅川さんの宣伝の極意を若手に伝授していただけないでしょうか?

あまり人には言わないんですが(笑)。まずはヒート(Heat)。作品に対して熱くならなくてはダメ。そしてハングリー(Hungry)。貪欲に売り込まなくてはダメということ。そしてヘルシー(Healthy)。健康的にいることがいちばんということなんですが、これがいちばん難しい。とにかく、この3つのHを使って、ヒット(Hit)を狙うということですね。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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