惨事の村は立ち上がった 台湾大水害から3年
2009年8月8日、強烈な台風による大規模水害が台湾を襲った。台湾の中・南部では1日で1000ミリ以上の降雨があり、台湾全土で673人が死亡した。
南部の山間地に位置する高尾県小林村では、土石流によって462人が生き埋めになり亡くなった。あれから3年。最も被害を受けた小林村の村民は、廃墟の中から立ち上がり、未来へ向かって歩んでいる。
09年当時、県当局は仏教団体と共同で、復興事業に当たっていた。ところが仏教団体は、屋外で動物の殺生や焼き肉をすることを禁じようとした。少数民族が大部分を占めていた小林村の村民にとって、これは受け入れがたいことだった。
その後、曲折を経て、村民は三つの地区に分かれて住むことになった。「五里埔」「小林二村」「大愛園区」である。就業や就学に関する問題、今後の災害への備えについての考え方など、村民によって事情は違っていた。
村民のリーダー格である蔡松諭さんは、「分かれて住むことに、村民の誰もが無念さを感じています。一緒にいられればどれだけよいだろうかと。でも、ここまで来れば神様のご手配です。五里埔もなかなかよいし、小林二村も新しい文化を生み出しています」と話す。
小林二村に入ると、ヨーロッパを思わせる風景の中に優雅な洋風の家屋が並んでいる。当時住んでいた仮設住宅を残し、今ではパン、木工品、せっけんなどを作る各種の工房がここに入居している。また、料理教室まである。こうしたことを企画しているのは、住民が組織する「発展協会」だ。