邦銀にも波及した欧米金融スキャンダル

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疑惑の発端は08年9月のリーマンショックだ。大手金融機関が互いの破綻リスクを懸念し、金利はハネ上がった。関係者の間では、自行の信用不安を隠すため、お互いに低めの金利を報告しているのではないか、とささやかれ始めたという。それまで問題にならなかったのは、ほとんどの銀行の格付けがAAAで信用力に差がなかったためだ。

さらに深刻な不正も明るみに出た。LIBOR担当者が、ほかの部署や金融機関の人間からの依頼で、儲けのために金利操作した例が05年ごろからあることがわかった。

英国の銀行界にはクラブ内で密室談合する体質があるという。LIBORの報告基準があいまいなうえ、少数行で決められてしまう点にも象徴されている。三菱UFJも特殊な空気の中、現地スタッフに任せ切りにしていた可能性が高い。

「銀行員が結託して庶民をだました」──。英米の批判報道は激しさを増している。金融危機後、大手金融機関は税金を使って救済されたうえに、幹部の高額報酬が話題となり、まさに「庶民の敵」。LIBORの不正が火に油を注いだ。

会社として不正を認めて巨額の和解金を支払ったのは英バークレイズのみ。だが、イングランド銀行のキング総裁がバークレイズCEOだった米国人でモルガン・スタンレー出身のダイヤモンド氏を辞任に追い込むと、逆にバークレイズ側はイングランド銀行のタッカー副総裁が危機時の操作を容認していたとされる内容の電話記録を暴露した。

選挙の季節を迎える米国当局も不正を見逃したという批判をかわすため、強硬姿勢を示す。米国のガイトナー財務相はキング総裁に対し、08年当時からLIBORの問題点と改革案を提案していたことを発表し、英国当局の対応の遅れを非難。双方で証拠資料の公開合戦に発展している。

英米当局の対立はLIBOR以外にも波及している。英HSBCの資金洗浄を米上院調査委員会が告発。さらに英スタンダード・チャータード銀行のイランとの不正取引をニューヨーク州当局が摘発し、当初、同行のニューヨークでの免許停止を打ち出したことに対し、英当局が不快感を示した。

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