新国立、僅差で大成建設のA案に決まった理由

再公募時点で勝負あり、「出来レース」の声も

12月22日の記者会見で意気込みを見せた隈研吾氏(右端)(撮影:大澤誠)

B案よりも点数が低かったユニバーサルデザインについては「車いすの人にも移動しやすいように3段構造となっている客席すべてから、すぐ裏にあるコンコースまでフラット(平らな)構造になっているほか、客席ひとつひとつに至るまで点字版をつけた」(隈研吾氏)。

建築計画のポイントでもある人の流れについても「全体の高さ(49.2メートル)を抑え、最上段のコンコースまで外部から直接行くことができる。3層構造のスタンドも人の流れがスムーズになるように設計した」(同)という。さらに、外観だけでなく、観客席から見上げたときに木を見られることも、B案にはない特徴となっている。

新国立競技場の建設を巡っては当初、建築家ザハ・ハディド氏のデザインを採用。「キールアーチ」と呼ばれる2本の巨大なアーチと流線形が特徴的だった。建設費は約2520億円に膨らみ、白紙撤回されたが、そのときスタンド工区を受注していたのが大成建設。竹中工務店は屋根工区を担当していた。このときの建設費は、スタンド工区が1570億円、屋根工区は950億円だった。

大成建設は作業員を確保していた

計画が白紙に戻され、再公募となり、今度は大成建設と竹中工務店が分かれて入札に参加することになったわけだが、「この時点で、勝負はある程度決まっていた」(ゼネコン幹部)と見ていた業界関係者は多い。というのも、工場生産する部分が多かった屋根工区に対して、スタンド工区は資材も作業人員もより多く必要とする。その工区を担当していた大成建設は白紙になる前に一部の資材を発注、作業員の手当もかなり進んでいた。

一方、労務者不足の中で、新たな人材や資材集めをしなければならない竹中工務店は清水建設、大林組と手を組まざるを得なかった。「すでに基礎的な調査や資材や人材の手当を進めていた大成建設と、3社連合でゼロベースからのスタートとなった竹中工務店とでは最初から大きな差があった」(ゼネコン幹部)。

気になるのは、前計画ではスタンド工区が1570億円、今回は屋根部分を含めて1490億円と80億円も安くなったことだ。この差は何から生じたのか。前計画の詳細が公表されていないため単純に比較することはできないが、「前計画では巨大な地下駐車場に加え、VIPルームも数多く設置され、その空調なども含めた金額だった」(業界関係者)という。今回はそれに比べれば、かなり「質素」な作りとなったようだ。

完成まであと約4年。東京オリンピックが終わってからも、後生にまで残る「レガシー」といえる国立競技場になるための計画は、まだ動き出したばかりだ。

JSCでは「今後、基本設計から実施設計と入っていく段階で、さらに多くの意見を聞いていく」としており、これで新国立競技場のすべてが決まったわけではない。実際に着工となれば、コストや工期に余裕を持っていたとしても、想定外の事態が起これば、再び計画に修正が加えられることもありそうだ。

 

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