また、退職勧奨を実際に行うのは直属の上司。念には念を入れて、こうした人へのフォローも忘れない。「人員合理化に対する逡巡」という項目を設けて、リストラの最前線に立たされる社員からの反発を想定した問答集も作っているのだ。さすがにこうした役割を押し付けられることに対しては、強い葛藤と抵抗があるのだろう。
「従業員の会社への忠誠心は長期安定雇用で支えられている。仮に現時点では貢献が低くても、過去はそれなりに貢献してくれたではないか」・・・・確かに雇用の安定は大切。しかし、必要なら断行すべきです。そうでないとグローバル競争に生き残れないし、ご本人のキャリアパス形成にもなれない。他社で活躍する場を提供すべきです
「いったん退職したら、この社会では再就職は難しい。失業者はごまんといる。何とかならないのか」・・・・そのとおりです。でも、再就職支援サービスを提供される方々はまだ幸運なのです。だから、この機会に決断してもらうのがご本人のためでもあるのです
「人事施策としてやむを得ないとしても、それは人事の仕事であって、われわれの仕事ではない。人事部担当者が責任をもって面談すべきだ」・・・・ご本人の仕事ぶりを熟知している上司でなければできません。人事は側面からサポートします
「本人が了解しないかぎり、退職させることはできない以上、目標達成は難しい」・・・・会社の意図を明確に伝えて、相手の気持ちを理解して、再就職支援などを説明すれば100%達成はできます
人事部はあくまで「側面から」サポート?
「人事は側面からサポートします」といって、矢面に立つことは回避しつつも、「頑張れば100%達成はできます」と、かなりの無茶振り。退職勧奨を行う直属の上司は、「安易な姿勢では使命を果たせません。目的達成への決意を」とマニュアルの中で厳命されているのだが、当人の抱える負担については、ずいぶんと軽い調子だ。
それにしても、なぜこのようなマニュアルが外部に出ているのだろうか。マニュアルの冒頭には、「小冊子の保管・管理には細心の注意を払っていただきたくお願い申し上げます」とした上で、「①人の目に触れるところに放置しない ②部下を始め、第三者にも開示しない ③会社の抽斗(ひきだし)に入れておく場合は、留守のときはカギをかける」と厳しい注意書きがなされており、当然、部外秘扱いである。
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