どうしてこの資料が手元にあるのかというと、日本IBMの社内にある労働組合を通じて提供を受けたからだ。研修を受けた管理職が、労働組合に匿名でリークをしてきたのだろうと水口弁護士は推測している。
「日本IBMは外資系だが、古くから日本で営業をしており、昭和40年代には従業員の9割が加盟する組合があった。現在では組合員は100人程度まで減ってしまっているが、そもそも外資系企業の中に、組合が存在すること自体が珍しい。こうした組合があるからこそ、内部の状況が分かるきっかけにもなる」
こうしたマニュアルによって戦略的な退職勧奨が行われている以上、労働者も会社の手の内を理解した上で、行動をする必要があるだろう。具体的にはどうすればいいのだろうか。
すんなりと応じてしまっては、会社の思うツボ
「労働者は、退職の意思がないことを、明確にメールや文書などで伝えることが極めて重要。説明だけ聞くという姿勢で2度くらい出席し、明確に退職の意思のないことを伝え、その後の退職勧奨の呼び出しには、もはや応じない。そして、『自分の業務に支障が出る』と伝える。これが、必ずやらなければならない対応」(水口弁護士)
管理職は、会社から退職させる目標人数を課せられている。最初の段階で「この人は退職に応じそうだ」と目をつけられてしまったら、真っ先に結果を出すためのターゲットにされてしまう。早い段階で、明確に退職の意思がないことを伝えることが、交渉上大切になってくる。
マニュアルに基づいてどのような切り返し方をされようとも、決して自分から「辞める」と言ってはいけない。「動かない杭」になることこそが、こうしたマニュアルに対抗する方法としては重要と言えるのである。
では労働者が、最後まで完全に拒絶し続けた場合はどうなるのだろうか。
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