日本はこうして「インド新幹線」を勝ち取った 実を結んだ"草の根活動"の舞台裏

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新幹線方式採用の最後の一押しというべきイベントとして、今年10月、日本の関係団体がV・P・パドノール上院議員らインドの国会議員団を招き、都内でインド鉄道インフラの近代化に関する講演会を催した。パドノール議員は「鉄道の近代化や輸送力増強は喫緊の課題。日本の技術支援が必要だ」と訴えた。

講演後のトークセッションでは日本側のコメンテーターが「日本とインドが高速鉄道技術でパートナーシップを組めば、いずれインドが外国に新幹線を輸出する時代がやってくる」と花を持たせると、インドの国会議員も「インドで大成功したマルチスズキの経験もある。日本の技術を信頼している」と応じ、蜜月ぶりをアピールした。

失敗が許されない"一番列車"

インド版新幹線の建設工事は2017年にスタートし、2023年に完成する予定だ。海外における新幹線方式の採用事例としては、2007年開業の台湾に続く2例目。今後の他国への展開にも弾みがつく。

ただ、楽観はできない。最大のライバルは中国だ。日本がインドの実務者を招いて検査や整備の様子を見せるという草の根活動を展開しているのを横目に、中国はインド国内に共同出資で「鉄道大学」を設立し、鉄道の製造や整備に関するノウハウを提供するとブチ上げている。

インドには、今回のムンバイ―アーメダバード間に続く高速鉄道計画がいくつもある。全長1750キロメートルのデリー―チェンナイ間やデリー―ムンバイ間といった基幹路線のFSを実施しているのは、中国系のコンサルタントだ。ムンバイ―チェンナイ間などほかの主要路線は、フランス、スペインのコンサルタントがFSを担当している。

もし、インド国内で新幹線方式が採用されるのが1路線にとどまるのであれば、勝利どころか敗北の烙印が押されてしまう。次につなげるためにも、“一番列車”で失敗は許されない。

「週刊東洋経済」2015年12月19日号<14日発売>「核心リポート06」に加筆)

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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