「酔っ払い対策」関西の鉄道はココまでやる! 忘年会シーズン!ホームからの転落防止策
同社の車両、特に新快速列車等に使用されている223系や221系は、スピード感を強調した半流線型となっており、先頭車同士の連結面は中間部よりも大きな隙間(すきま)ができている。
過去にここからホーム下へ転落した乗客もいたため、この部分にもホロを取り付けることにしたのだ。このホロは、取り付けた車両が列車の最前部となった場合でも運転士の視界を妨げないよう、形状が工夫されている。
また、前述の転落事故が屋根のない暗いホーム上で起こったことから、先頭車同士の連結時には両側のヘッドライトを点灯し、そこに大きな隙間があることを知らせている。
ベンチの設置向きを変える新発想
JR西日本の取り組みは転落防止ホロだけではない。2015年8月から大阪環状線の京橋駅で運用しているのは、酔客の特徴である「長時間の座り込み」「突然動き出す」といった行動を46台の防犯カメラで自動検知、管理センターの係員が駅員に電話連絡するというもの。通報を受けた駅員はその乗客に声を掛けるなどして、事故防止につなげている。
また、酔客の行動分析から生まれたもう一つの対策が、ホーム上にあるベンチの向きを変えたことである。
酔客がホーム上から転落というと、ホームの端をフラフラと歩き、つい足を踏み外したといったケースが目に浮かぶが、実はこういったパターンは非常に少ないことが同社の分析で判明した。
落下する大半のケースを占めたのが、ベンチで座っていた酔客がいきなり立ち上がって前方へ歩き始め、そのまま線路へ転落するというケースだった。そこで、酔客がこうした行動をとっても転落しないよう、線路に向かって設置していたベンチを90度回転させたのだ。
同社の2014年度のホームにおける人身障害事故件数は13件で、うち77%(10件)が酔客によるもの。全国平均の62.6%よりも高く、同社にとっても酔客対策は喫緊の課題であった。大掛かりな設備導入を必要としないこの取り組みは展開しやすく、すでに新大阪駅や尼崎駅などで導入されており、今後は他の駅にも広げていきたいとしている。
ところで、JR西日本の安全研究所が行っているこれらの研究・分析には、大阪市交通局も深く関わっている。先の防犯カメラを用いた酔客検知システムの開発段階でも、大阪市営地下鉄の防犯カメラ映像や事故報告書が活用された。「JR西日本のデータだけでは統計上十分なサンプル数が得られない。また、地下鉄でのお客様の動向もつかみにくいため、当局のデータを提供している」(大阪市交通局広報課)という。
またホームのベンチ設置方向に関する研究は、同局からの出向者が担当。この研究結果を踏まえて、地下鉄御堂筋線の新金岡駅でもベンチの設置方向が変更され、今後は他の駅にも展開していく予定である。
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