松本:商品は、糸井が最終チェックをしています。もっとも、商品の場合は、生煮えの状態はほとんどなくて、自分たちとしてはこれ以上は考えられないというところまでは持っていきます。ただ、「こうしてみたら」と糸井に言われることがたまにあります。それですごくよくなる可能性を秘めているので、糸井に見せる場を大事にしています。
糸井が「ショートケーキのイチゴ」という話をよくします。ショートケーキって土台のスポンジの部分が大事ですが、イチゴがないと魅力がまったくない。ただの白いスポンジなので、人が買う気持ちにならない。スポンジ部分もすごい大事だけど、やっぱりイチゴなんだと。僕たちの仕事は、イチゴを載せる仕事なんだと。なので、とにかく自分でショートケーキにイチゴを載せられるように鍛錬しなさいと、商品チームは言われています。
篠田:今の商品チームは、最後に糸井に持って行ったときに、自分たちも一応イチゴを載せているんだけど、そこに糸井が特大のものを載せたり、「ここキウイも入れたら?」とか言うので、「ショートケーキにいいんですか?」「いいんだよ」といったやりとりをしている感じなんだろうと思います。
──外から見ていると、糸井さんが決められているイメージがすごく強くあったので、驚きました。
松本:それも一方で事実ではあります。でも、最近は、糸井自身が消費者ではない商品、たとえば女性ものの洋服とか、編み物のキットとかも増えていて、それに関しては、「僕よりもみんなのほうが、この商品について深く考えているから、好きにしたら」みたいな言い方をします。これを見たときに、たとえば会社のメンバーが、「いいじゃん、いいじゃん」ってキャーキャーしていたら、「これは当たるな」と思ったりするそうです。うちの会社の商品は、同僚や会社の周りの人が最初の消費者で、そこにウケなかったら世の中にもウケないなって思って、もう1回やり直そうと思うことはありますね。
糸井さん後の体制とは?
──そこは糸井さんが舵をとっていると思っていました。
松本:商品は特にずっとそうでした。おそらく、ここ5~6年は糸井が自分にしかできないことに集中し、あえてこの部分は私たちスタッフに任せよう、というふうに努めているような気がします。
──僕は「糸井さんは答えを持っている方」という印象を持っています。相談をすると答えを返してくれそうなので、自分で考える機会が減ったりしないのかなと思ったりもします。
松本:「なんか~、こんなのやりたいんですよねえ~」みたいな感じで、何も考えないで行くと、怒られるんですよ。それで、怒られたくないから、一生懸命考える。でも、怒られた経験はものすごく大事で、本当に感謝しています。「怒られたくないけど、怒られたい」みたいな(笑)。
──NHKの対談番組で糸井さんが出演されていたときに、「引退を考えられている」とおっしゃっていました。別の場所では上場をめざすというお話もされていたりしますが、ポスト糸井さんついては考えられているのでしょうか。
篠田:誰が、とは決まってはいません。糸井もいつかは歳を重ねて、社長として機能しなくなるというときが当然やってくるでしょう。そうなったときにどうしようかとは考えているようです。後継者さえ決めれば組織が動くわけでもないので、今いろんな方面で体制を作っているところですね。
──コンテンツへのコミットが減ってきているのもその流れですか。
篠田:そうですね。たとえばこういう取材ですと、かつてはすべて糸井が受けていたと思うんですよね。今は私たちに任せて出ませんね。このインタビューもその表れのひとつだと思います。
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