イキイキ勝俣会長と紛糾する株主、東京電力の株主総会は5時間30分の「すれ違い」、詳細レポート

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その後も多岐にわたる質疑が繰り広げられ、勝俣会長の指示で各担当の役員が適宜回答。昨年は、激しい怒号に勝俣会長が「静粛に願います」と声を張り上げたり、東電幹部に詰め寄る株主がいたりと荒れ模様だったが、それに比べれば東電ペースで議事が進んだといえる。
 
 時折、怒鳴り声が会場内に響いても、勝俣会長や役員がそれを気に留めるどころか、勝俣会長が「ハイハイ、動議? 質問?」と甲高い声で快活に取り仕切る姿が目立った。

株主提案はことごとく否決

開始から5時間。15時になると、勝俣会長が「そろそろ議論もされ尽くした」と、最後の質問を募る。ところが、これに対して最後の質問者となった女性が、「これまで25人以上質問をしていると思うが、女性を排除して進められている。20年間、女性を排除して、カネと権力中心にやってきた結果が福島第一原発事故。このままで新生東電などありえない」と激しく抗議。「男性と女性は感じていることが違うのだから、あと少なくとも5人の女性から質問を受け付けるべき」と訴えた。

さらに、「これまでの質問の半分以上は国の責任じゃないか、というものだった。制度のマイナスはあるのだろうが、肝心なのはなぜこうなったかということ。それがまるで議論されていない」と会場の株主たちへ問い掛けた。

この女性の問題提起を受け、続いて2人の女性からの質問を受けた後、15時20分過ぎには議案の採択に入った。同時にこれまでにないほどの怒号や拍手が一斉に上がる。それを意に介することなく、勝俣会長はまず会社提案の1~4号議案について次々と採択、賛同を得た。
 
 続いて東京都を含む株主による11議案も採択されるが、こちらはことごとく否決され、あっという間に全15議案の採択を終える。

採決を終えると、続いて矢継ぎ早に新役員を紹介。気が付けば、新会長に就任する弁護士の下河辺和彦氏が恭しく就任に向けてのあいさつをし、勝俣氏の「これにて閉会します」という言葉とともにあっさりと総会は終わった。

正味5時間30分。東電株主総会史上、昨年に続き2番目に長い総会となったが、昨年同様、最初から終わりまで、詰め寄る株主に対して、それをするりと交わす東電との「すれ違い」ばかりが目立った。さらに、今年に限っていえば、ややもすると吹っ切れたようにも見える勝俣会長の軽妙な仕切りが目を引いた。

東電の国有化が決まる前には、政府の議決権比率をめぐり、水面下で政府と勝俣会長率いる東電が激しい攻防を繰り広げていた。が、結局は政府に2分の1以上の議決権を譲渡することになった東電。勝俣会長の快活さははたして、「カラ元気」なのか、それとも東電の経営から身を引くことに対するすがすがしさなのか。


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(倉沢美左 撮影:今井康一 =東洋経済オンライン)

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