イキイキ勝俣会長と紛糾する株主、東京電力の株主総会は5時間30分の「すれ違い」、詳細レポート
「猪瀬直樹です。出席番号は10495」。総会開始からおよそ1時間。東電に対し「老朽火力発電所について、民間事業者を活用し高効率で環境負荷の少ない火力発電設備のリプレース推進を図る」など4つの提案を出していた、猪瀬副知事が議案説明に登場。会場からは拍手が上がり、にわかに活気を帯びる。
猪瀬副知事は「信頼を取り戻すには、東京電力は不退転の覚悟で改革を取り組まないといけない」とし、4つの株主提案を説明した。「ゼロから再出発するには意識改革が必要」と再三繰り返したうえで、東電がいまだに電気事業以外の事業を展開できる定款を維持していることなどを非難。
さらに、「りそなは4回ボーナスが出なかった、JALも3回。それなのに東電はこの冬からボーナスが出る。それでは自ら身を削ることにはならない」と、コスト削減も不十分とする考えを示した。そのたびに、一部の株主から「そうだ」といった賛同の声や拍手が響く。
続く10~14号議案は402人の株主が提案。代表して説明した株主は福島県在住者。いまだホットスポットが随所にあり不安とともに暮らす人々や、生まれ育った故郷を追われた人々などの悲劇について語ったうえで、「しっかりその責任をとるために、経営陣は福島に居を移すべき」と主張。
さらに、除染について国の負担の必要性を示唆した東電に対し、除染も全面的に負担すべきだとし、その原資として送電設備や変電設備、配電設備などの固定資産を徹底的に売却すべき、との株主提案を示した。
猪瀬副知事再び吠える
すべての議案説明が終わったのは昼の12時。ここからようやく事前質問への回答に続き、質疑応答に入る。
昨年は東電を糾弾する質問に終始したのに対して、今年は「原子力賠償法3条ただし書き(天変地異の事態においては賠償責任を免れる)の適用は考えないのか」「事故については東電だけ極悪非道扱いされている。国や自治体にも賠償責任を問うべき」という意見や質問も目立った。
中には「去年3月にはこの会社は清算し、株券も紙くずになるかと思った。会社が存続するのはいいこと。政府との交渉ご苦労様でした」とねぎらう株主さえいた。