米国で金融業はもう「稼げる」商売ではない ウォール街冬のボーナスに見る苛酷な現実

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ジョンソンによれば、世界のいくつかの国では経済成長が予測を下回り、すぐに回復することも期待できないことから、金融機関の活動も低調になっているという。

M&Aアドバイザリー分野は順調だが

金融危機後に導入された新たな規制では、金融機関の自己資本比率を高めることが義務化された。金融不況が起きた際に、緩衝材としての役目を果たすためだ。

自己資本比率を高く維持しようとすると(資本増強は株式発行によって実現されることが多い)、一部の事業(特に債券や通貨といった資産の売買)は金融機関にとって負担の大きい事業となる。

今回のジョンソン・アソシエイツの報告書によれば、債券取引の分野のボーナスは10〜20%減額となる見通しだ。減少幅は金融業界内で最も大きい。ちなみに金融危機の前までは、債券は金融業界において最も安定した利益源だった。

一方、資本をあまり必要としない――たいていはリスクが少ない――事業分野は、業績も順調ならボーナスもいい。金融業界で最近、最もうまみのある事業分野は、M&Aを検討している企業向けのアドバイザリー業務だ。この分野における今年のボーナスは15〜20%高くなるとみられる。

アドバイザリー業務といえばウォール街を代表するビジネスと思われているが、金融業界全体で見ればそれほど大きな比重を占めているわけではない。なのでほかの分野のマイナスを相殺するには不十分だ。

また、あまり多くの資本を必要としないことからここ数年、金融機関が力を入れているのが富裕層や大手法人を相手にした資産管理ビジネスだ。だが今年、市場が活気を欠き景気も伸び悩んだことからこの分野の業績も振るわず、ボーナスは5%減になる見込みだ。

ジョンソンに言わせれば、金融業界はさまざまな問題をかかえるがゆえに、若いトップクラスの人材を引きつけるだけの魅力を失いつつある。若き秀才たちの目には、シリコンバレーのテクノロジー関連企業のほうがいい条件を出していると映るのだ。

以前であれば「実際にそうだった試しはほとんどなかった」とジョンソンは語る。「(だが)ここ数年、本当のことになってきた」

(執筆:Nathaniel Popper記者、翻訳:村井裕美)

(c) 2015 New York Times News Service

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