OPEC「減産合意」なら株式市場はどうなるか 産油国の動向から目を離してはいけない

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その原油価格だが、中東産油国の盟主であるサウジアラビアのスタンスに変化の兆しが見られるとの報道が目に付く。現在の原油価格の水準では、サウジといえども単年度の財政赤字は避けられない状況であり、国際通貨基金(IMF)は、現在の原油価格の水準が続けば、サウジといえども5年程度で外貨準備が枯渇すると警告している。そのため、今後はこれまでの持久戦がいよいよ破綻に向かうとの見方が出始めてもおかしくない。

12月4日にはOPEC総会が開催されるが、その前日の3日にOPEC加盟国と非加盟国による協議の開催について、調整が進んでいるとの報道がある。その結果、ロシアも交えた大規模な減産合意がなされないとも限らない。そうなれば、市場へインパクトはきわめて大きなものになる。

現在、シリアではイスラム国(IS)の掃討を目的に空爆が行われているが、過去の事例を見る限り、原油価格はこれらの地政学的リスクや、テロなどを理由に上昇することはあまりない。やはり、需給バランスを根本的に変えるような材料、つまり産油国による減産が原油価格の押し上げにはもっとも影響が大きいといえる。原油価格が一段安となり、新安値を更新すれば、減産の検討はきわめて現実的なものになろう。OPEC総会まで産油国の動向や発言には、これまで以上に注意が必要である。

12月にも訪れる「相場の大転換」に備えよ

原油価格が押し上げられるもうひとつの材料に、ドル相場の動向がある。市場では、米利上げを背景にドル高基調が続くとの見方が多い。また、欧米の金融政策の違いから、ユーロドルは「1ユーロ=1ドル」のパリティ(等価)に向かうとの見方も根強い。しかし、はたしてそうだろうか。直近3回の米利上げでは、米国の利上げに対して、日本は金融緩和を行っていたが、結果的にドル安・円高に進んでいる。ECBが追加緩和に動くとしても、織り込みが進めば、ユーロの下値は堅くなろう。

また逆説的ではあるが、原油相場の上昇がきっかけとなり、ユーロが買い戻される可能性も否定できない。本欄でも繰り返すように、筆者はこれから12月中旬までとそれ以降は、市場環境が大きく変わる可能性が高いとみている。その兆しが為替相場や原油市場に徐々に見られ始めている。資源国通貨の豪ドルが大きく値を戻し始めており、この動きにも注目したい。

株高期待が大きいのは結構なことではあるが、今後は2019年まで、株式からコモディティに主役が代わる可能性が高い。3年間続いたドル円相場の上昇もすでに最終盤である。「相場の大転換」に備え、株式も持ち高を徐々に調整し、ドル安・コモディティの反発に備えたいところである。今後1週間(11月26日~12月2日)の日経平均株価の予想レンジは、1万9250円~1万9950円としたい。

 

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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