「ドクターイエロー」、裏側まで撮影した男の人生 写真家・村上悠太「鉄道を支える人たちを撮りたい」

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社会に出た村上は、1人でロケや取材を任せられるようになるなど、忙しくも充実した日々を送っているように見えた。

しかし、事務所の先輩カメラマンだった久保田敦が投げかけた言葉に、動揺した。

「『村上君の鉄道写真』とは何?」

中井はオールマイティでありつつ優しい世界観がある、山崎はクローズアップが上手い。そして久保田は編成写真のスペシャリスト。

27歳の村上は、何も言えなかった。

村上は、これまで自分が撮影してきた写真を見返し、気づいた。

「人がたくさん写っている」

自分は人が好きなんだと思った。

また村上には、社会人になって思うことがあった。鉄道の現場で毎日、いつも通りに働く人たちを取材するなか、その人たちのおかげで列車が走っていること、自分が「鉄道」を楽しめていることを実感したのだ。

村上は、そんな自分が愛する「鉄道」を支えている人たちを応援し、感謝を伝えられるような写真を撮っていきたい、それを「自分の鉄道写真」にしたいと考えた。鉄道ファンのひとりとして、鉄道会社やそこで働く人たちの役に立ちたい、と思った。

30歳で、村上は独立する。「村上悠太の鉄道写真」を追求するためである。

村上の独立後初個展となった「つなぐ旅ーその、日々へー」より。独立後は自身の好きな「鉄道のある光景」を撮影してゆくことに全力を注ぐようになり、「ひとと鉄道」という、今にも続く一つの核ができたという。これがやがて、地域に住む方々や旅人だけでなく、鉄道を支え動かす鉄道事業者の方々への感謝や(写真を通して)応援したいという思いに発展し、今回の写真集につながっていく(写真:村上悠太)

「JR東海公式写真集」撮影の大役

鉄道の現場、その日常を「自分の鉄道写真」とした村上が、常に意識していることがある。

「カメラを持っている自分は『邪魔な存在』である」ということだ。

その現場、日常には本来、カメラはない。自分が撮影することで「空気」を壊す可能性が多いにあるという自覚を持たねばならない。「絵になる」「切り取る」という写真でよく使われる表現も、村上には違和感がある。

被写体は絵になるため、そこにいるのではない。外から空間を切り取っているのではなく、こちらが、その空間に土足で足を踏み入れているのだ。

この自覚を持ったうえで、その場の日常に溶け込み、撮っていくことが大事だと、村上は考える。

「『村上悠太がいる』ということがイレギュラーじゃないように思ってもらえたら嬉しい」

そして37歳のとき、鉄道ファン以外にも高い人気を誇る「ドクターイエロー」の引退記念写真集を「JR東海公式」で撮影するという大役が、村上に回ってくる。

夜明けの大井車両基地(写真:村上悠太)
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