「5年間で3度、クマと対峙した」→足に裂傷も負った70代ネパール人が語る《クマ被害の実態》… ネパールと日本の"意外な関連性"とは
足の裂傷は深かった。チベット伝統医学に習熟しているドルジェは、自分で止血した(皮肉なことに、使ったのはクマの肝を用いた薬液だ)が、感染症になれば命を落とす危険がある。さらに手当てを受けるため、チャーターしたヘリでカトマンズへ行く必要があったが、ヘリが来るまで3日間待たされ、現地の基準では法外な金額の費用(約2000ドル相当)がかかった。
別の村では、高齢女性が夜間に屋外トイレへ行く際にクマに襲われている。女性は顔に重傷を負い、息子が資金をかき集めて治療に送り出した。
増えるクマ被害に、現場はどう対応すればいいのか。
自然保護という「障壁」
かつて、クマによる危害が大きくなりすぎた場合は罠を仕掛けたと、ドルジェは言う。しかし、その選択肢は1990年代に消え去った。政府主導の下、一帯の天然資源管理を目的とするマナスル保護区プロジェクト(MCAP)が発足し、野生生物の殺害が禁止されたためだ。
規制が一時的に緩和されれば、より敵対的なクマを退治できると、ドルジェは話す。だが、MCAP当局者はこうした意見に耳を傾けない。その一方、クマ対策として認められているソーラー電気柵などには効果がないという。
若者が去り、高齢者がクマと戦うしかないなか、残された選択肢についてドルジェは内省的な見方をしている。
「最初はクマを殺すべきだと思った。だが心のどこかでは、前世での悪い行いのせいでクマに襲われたのではないかと感じる。クマが来たのは私を襲うためではない。クマを殺せば、また罪深い行いをすることになり、新たなカルマ(業)を生み出すだろう。ならば、怒っても意味がない」
命と生活に関わるクマの脅威の拡大に、ヌブリの住民がどう対応するかは未知数だ。だが、確かなことが1つある。若年層の流出のせいで、村に残された人々はより差し迫った危機に直面し、解決はより難しくなっている。
(執筆者:ジェフ・チャイルズ)
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