只見線追う郷土写真家、初めて訴える「真実の声」 奥会津の経済崩壊は自然災害でなく「人災」だった
――そのような事情があったとは驚きです。
奥会津の雇用と経済を100%支えていたのは建設業ですが、この影響で地元の建設会社の倒産が相次ぎました。当時、私は、只見線沿線の三島町の有力建設会社である佐久間建設工業で社長に次ぐナンバー2のポジションの役員を務めていました。
こうした状況の中で、建設業がダメなら観光誘客で奥会津を活性化するしかないと決断し、この20年間、必死で只見線と奥会津の絶景の写真を専門に撮影してきたわけです。そして、2011年からは体験型観光需要を創出するため地域の人々とともに「霧幻峡の渡し」をしましたが、その直後に新潟・福島豪雨で只見線とともに被災しました。
バブル経済崩壊後、日本経済は失われた30年とも言われていますが、私はさらなる日本経済の縮小も予想して、誘客の対象をインバウンド、特に台湾に定め、2016年から台湾主体でのPR活動に傾注してきました。
入札制度変更で建設労働者が10分の1に激減
――具体的にどのような政策が奥会津の経済を崩壊させたのでしょうか。
2006年に、佐藤栄佐久福島県知事が収賄金額0円で逮捕有罪となって、冤罪同然で抹殺されましたが、この知事逮捕を受けて福島県は入札制度を指名競争入札から一般競争入札に入札方式を変更したことでした。当時の佐藤知事は原発行政に厳しく、東京電力のトラブル隠しが発覚したため2006年7月までに原発稼働を拒否し、東電管内の原発17基を停止させています。
指名競争入札とは、自治体などの発注機関が事前に特定の事業者を指名し、指名された事業者だけが入札に参加できる方式で地域の雇用と経済を潤しますが、一般競争入札は、入札情報が事前に公開され、参加資格を満たす不特定の事業者が自由に入札に参加できる方式です。
佐藤知事が逮捕されると同時に、県の土木部長も逮捕されたことから、県土木部が委縮して入札制度を一気に変えてしまいました。
一般競争入札となると、地元の事情を知らない県外の大手の業者が低コストで仕事を取っていきます。県外の業者は、そもそも地元の人間を使わないことから、地域に対する恩恵が全くないわけです。
さらに山間部の特殊な警備や災害対応、除雪など地元の業者でなければできないノウハウもあり、地元の業者が無くなってしまうと地域住民の安全を守れなくなるという大きなリスクも生じるわけです。
そんなことになると地域が完全に消滅してしまうという強い危機感を持ち、福島県で唯一私だけが、これに異議を唱えて地元新聞社などに奥会津の危機を訴えてきました。しかし、多勢に無勢で、当時のマスコミは「一般競争入札は公明公正」という論調ばかりで、私の主張を取り上げてもらうことは叶いませんでした。地元の人間は建設業者も含めて役所に逆らえないため、私のほかに公然と異議を唱える人は誰もいませんでした。
この結果、私が心配したとおり、地元の建設業界が壊滅的に崩壊し、私の肌感覚としては、建設業者は5分の1に縮小し、建設労働者は10分の1にまで減少してしまいました。こうした悲惨な状況となっても県や国の救済措置はなく、奥会津の経済は完全に破壊されてしまったのです。


















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