トランプ、習近平、プーチン……なぜ世界の指導者は宗教に近づくのか? 「政治と宗教」の危うい関係

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宗教改革後、カトリック教会はその資産の大部分を失った。これは近年の研究によると、ヘンリー8世の側近トマス・クロムウェルが修道院を解散させ、その所領を没収した英国だけでなく、宗教改革が広まったヨーロッパ全土で起きたことだったようだ。

しかし国教という地位にない宗教団体であっても、物質的に大きな特権を享受していることはめずらしくない。それは現代においても同様だ。宗教団体は一般の信者から献金を受け取っていながら、たいてい税金を課されていない。

多くの国では、(世俗の慈善団体とは違って)収支も公表しておらず、雇用に関する法律も部分的に免除されている。ライバル宗教の信者であれ、世間の常識から外れた生き方を望む一般の市民であれ、対立する者に対しては、法の力を使うことがしばしば認められている(ときに奨励されていることすらある)。

このような状況を目の当たりにすると、宗教団体が強大な力を持っているのは、そのような特権を与えられているからだと考えたくなる。実際、そのような面もある。しかしもっと重要なのは、独自に強大な力を手に入れたからこそ、それらの特権を与えられているということだ。

ではどのように強大な力を手に入れたかといえば、だいたいは、自分たちにそのような力を持たせるよう信者に信じ込ませることによってだった。

最終的には有害なものにもなりうる

したがって、熱心な信者の獲得を通じて、すでに力を手に入れていなければ、政治指導者から特権を授けられても、宗教団体は自分たちの力を盤石なものにはできない。政治指導者が自分に都合のよくない宗教の弱体化を図ろうとして、ライバル組織に特権を与えても、その組織がみずから信者を増やすという基本条件を満たしていなければうまくいかないのだ。

わたしがこの原稿を書いている現在、フランス政府は「穏健な」イスラム評議会を立ち上げることで、イスラム原理主義に対抗しようとしている。20年前に同じことをして失敗したのをすっかり忘れているようだ。中国政府は「公式」のカトリック教会のほか、「公式」のプロテスタントやムスリムの組織を長年支援している。

しかし政府を後ろ盾に持つそれらの団体はいずれも、「非公式」の組織ほど一般市民からは支持を得られていない。米国では、共和党に対する福音派の政治的な影響力が強まるにつれ、福音派に背を向ける人が増える傾向にある。福音派の信者を自認している人も、教会から足が遠のいている。アダム・スミスが警告していたように、教会にとって、政治的な影響力は、初めは有益に見えても、最終的には有害なものにもなりうるということだ。

(翻訳:黒輪篤嗣)

ポール・シーブライト トゥールーズ大学経済学部教授

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Paul Seabright

トゥールーズ大学経済学部教授。2021年までトゥールーズ先端研究センター所長を務める。2021~2023年、オックスフォード大学オール・ソウルズ・カレッジのフェロー。

著書に、『殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?――ヒトの進化からみた経済学』(みすず書房)、The War of the Sexes: How Conflict and Cooperation Have Shaped Men and Women from Prehistory to the Present(Princeton University Press)などがある。

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