「押し入れに…」人気フクロモモンガに事故死が多い訳――さみしさやストレスから生じる痛ましい死。小さい体が訴える飼い主へのメッセージとは

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フクロモモンガは人間の手のひらサイズの動物ですから、イヌやネコの病理解剖とはやはり勝手が違います。

小さな臓器を傷つけてしまわないように、より繊細なメス運びが必要となります。頭の中で念入りに解剖手順を再現してみて、イメージがしっかり固まったところで、遺体に慎重にメスを入れていきます。

解剖を進めていくと、たしかに自分で腹部を傷つけた痕跡はありました。

しかしそれとは別に、育児嚢の中にある乳腺にしこりを見つけました。組織切片を作って顕微鏡で詳細に観察を行った結果、このフクロモモンガは乳腺腫瘍(乳がん)を患っており、さらにはそれが肺にも転移し、最終的に呼吸不全で亡くなっていたことがわかりました。

自咬症による傷が死因ではなかったのです。おそらく乳がんができたことで腹部に違和感を覚え、その部分を咬んでしまったのでしょうね。

「腫瘍ができにくい」は本当か

この病理診断の結果を飼い主さんにお伝えすると、「フクロモモンガの飼育書に『腫瘍ができにくい』と書かれていたので、腫瘍の可能性は考えていませんでした」とおっしゃいます。

たしかに、フクロモモンガの飼育書やネット上にある解説記事などには、「フクロモモンガは腫瘍が少ない動物である」ということがしばしば書かれています。しかし、僕自身はその見解に対して懐疑的です。

実際に病理解剖をしていると、乳がんを筆頭に、皮ふのがんや肝臓のがんなども決して珍しくはありません。

先にも述べたように、ペットとしてのフクロモモンガは、多くが「不慮の事故」によって寿命をまっとうする前に亡くなっているようです。もともと腫瘍ができにくい動物ということではなく、単に腫瘍が発生しやすくなる年齢年齢に達する前に、命を落とす若い個体が多いだけなのかもしれません。

最近では飼育方法が普及したおかげで長生きできるようになってきて、腫瘍と診断されるフクロモモンガも増えてきているように思います

このようながんに関して飼い主さんができることは、「日頃から食欲を確認し、体重を測って記録しておくこと」、加えて「日常のコミュニケーションのなかで全身をよく観察してあげること」。そして、「食欲不振や体重の減少、皮ふのできものやしこりなどに気づいたら、できるだけ早く動物病院を受診すること」です。

体の小さな動物ですから、些細な変化も見逃さないことが大切です。

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