「退学にすべき」「絶対に許してはならない」と大炎上…栃木・県立高校で「顔を殴る」「頭部を蹴る」事案が発生、動画がここまで拡散した納得の理由

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もちろん、当時と時代状況も背後要因も同じではないが、重要なのは、たとえ自力救済が禁止・制限されているとしても、法執行機関が適正に機能しなかったり、所属組織が不正な状態を放置するといった“無法状態”が放置されているならば、まるで先祖返りのように自力救済が頭をもたげて来ることは避けられないということだ。

警察の介入を含めた法による救済が、比較的長期にわたる可能性が高く(救済までのタイムラグ)、金銭的な支出だけでなく、時間、労力、機会損失といったコストとベネフィットのバランス(費用対効果)に見合わないなど、被害者の権利・名誉回復の仕組みに大きな不備がある現状も、自力救済を必要悪として捉えやすくなる一因になるだろう。

聖域が根絶されない限り、今後も同様の現象が起きる

フロイド氏の事件は、人種差別による「暴力が暴力として認知されない」聖域の出現であったが、日本においても、学校などの「暴力が暴力として認知されない」聖域がいまだ存在している。このような空間が根絶されない限り、今後も同様の現象が巻き起こることは目に見えている。

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韓国では、2021年以降、いじめを告発する「学暴#MeToo」と呼ばれる現象が先鋭化した。学校で暴力の被害を受けた人々が数十年後に、著名人などの加害者を名指しで批判して社会的制裁を与えるものであった。出演番組の降板など、芸能界全体が対処に追われる事態に発展した。いわばデジタルタトゥー時代の悪夢でもある。暴力やいじめの直接的な証拠となる動画の影響力は計り知れない。

とりわけ、被害者救済で抜本的な改善が望めないというムードが定着すればするほど、将来的にはその反動による「学暴#MeToo」のような地獄が待っているだろう。

繰り返すが、今回の動画拡散は、決して褒められたものではない。しかし、学校や教育委員会への不信感が募り、少年法に期待できないというムードが醸成された現状では、倫理観や道徳心に訴えるのにも限界があるだろう。結局のところ、「暴力が暴力として認知されない」聖域を徹底的に暴露し、変えていくこと以外に真の地獄を回避する途はないのである。

【関連記事】「いじめではなく暴行」「どんどんさらせ」などの声もあるが…栃木・県立高校での「いじめ暴行動画」が拡散、「過剰な私刑」に思うこと
真鍋 厚 評論家、著述家

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まなべ・あつし / Atsushi Manabe

1979年、奈良県生まれ。大阪芸術大学大学院修士課程修了。出版社に勤める傍ら評論活動を展開。 単著に『テロリスト・ワールド』(現代書館)、『不寛容という不安』(彩流社)。(写真撮影:長谷部ナオキチ)

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