積極財政なのに「国債発行は30兆円割れ」のカラクリとは?<税収増>を見込んだ財務省の深謀遠慮……「借金付け替え」という綱渡り

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税収が大きく伸びると見込まれることから、通常のルールだとその分だけ地方交付税財源は大きく増えることになる。それでいて、過去に負った借金がまだ多く残っている。だから、増えた地方交付税財源をまるまる地方自治体に配るのではなく、一部を地方交付税のために負った借金の返済に充てることにした。

加えて、26年度予算政府案では、その借金のうち7000億円を(交付税及び譲与税配付金特別会計借入金から)一般政府が引き取る代わりに、一般会計から出す地方交付税財源を7000億円減らすことにした。これで、国債発行額は7000億円減らせるのである。

なぜそうなるか。

地方交付税会計から借金を一般会計が引き取った

もし一般会計から出す地方交付税財源を7000億円減らさず単純に地方交付税のための借金を(交付税及び譲与税配付金特別会計にて)返済すればどうか。

文字通り、借金は7000億円減る。他方、一般会計は、7000億円が得られないから、もはや赤字国債でその分を工面するしかない。地方交付税のための借金が7000億円減って、国債が7000億円増えるというわけだ。

26年度予算政府案に盛り込まれた前述の方策だとどうか。一般会計から出す地方交付税財源を7000億円減らせば、一般会計で7000億円の財源の余裕ができる。その分、国債発行額を減らすことができる。他方、地方交付税はその分だけ減ってしまう。

単純にこれだけで終わると、地方交付税のもらいが減っただけにとどまる。そこで、地方交付税のための借金を一般会計が7000億円引き取って、返済負担が減る分だけ地方交付税を将来増やす余地ができる。

このような対応は、初めてのことである。ただ、国債発行を7000億円減らせるか否かで、30兆円を割るか割らないかという大違いになる。

その代わり、引き継いだ借金が一般会計の債務残高に上乗せされることとなる。

過去最大の一般会計の予算規模となった26年度予算政府案は、国債発行では綱渡り的な対応で、なんとか30兆円を下回ることができたといえるだろう。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶応義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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